原っぱに集まる者共 その2
「今日は、まあ、シュロ君がいるという事は、休みというワケではないのだろう?」
何も知らないレクターは、ドラゴン独特の巨体を『ぐるり』と回して、何故かダロタで視線が止まる、そんな中、シュロは説明をしていた。
「なるほど、それで今日は休業となったというわけだな。
まったくあのバンパイアめ、今度は何を失敗したのかは知らんが、あの魔王も何も店舗まで壊す事はないだろう」
レッドドラゴンのため息という珍しいモノを見ながら、シュロは作業を再開し始めた。
「うわ、重っ!!」
ダロタを見て、同じような柱を持ち上げようとしたシュロは前につんのめっていた。
「シュロ君、オークの力を侮ってはならんぞ?」
レクターは笑いはする。
だが、その様子を『じぃ』と見ていたので、シュロは半ば威圧された様子で聞いてみた。
「何でしょうか?」
「君たちが一体、何をしているのかね?」
「掃除ですが?」
「掃除?」
シュロにはドラゴンの表情はわからないが、この時、明らかに『きょとん』としていたのがわかった。
「もしかして、知らないのですか?」
「いや、そんなのは知ってはいる。
だが瓦礫など、焼き払えば良いだろう?」
「魔界らしいですね?」
「おや、世には火を吹いてそれを見世物にする人間もいると聞くが?
シュロ君は、出来ないのかね?」
「それは芸としてですよ。
それに、その程度の火力じゃ、こんな瓦礫は燃やしきれませんよ」
「なるほど…」
シュロは何とも言えない顔をしていると、レクターんも口が開いた。
ダロタが一目散に逃げると、シュロはようやく気づきレクターは言う。
「シュロ君、『太陽の起源』という物語を知っているかね?」
ちなみにこんな昔話である。
かつて星々は光の放つ事のない暗闇の中にあった。
そこに一匹のドラゴンが一つの星に消える事のない炎を浴びせ。
太陽を作った。
それがシュロの世界における『太陽の起源』である。
「文明は語り継いでいるモノだよ?」
力をためる様子を見て、人間は不思議とそれが本当の事だと気づくのだから不思議である。
「熱波やら衝撃は届かないようにしてあるから、安心したまえ」
レクターは自分の前に魔法陣らしき数式が展開されるが、そういう問題じゃない。
人間、火のついた爆弾を前にして逃げるのは当然だろう。
レクターの背後というのに、シュロの視界、前方の空気が波打った。
そして、レクターが衝撃を届かないようにしてあったためか、不思議と音もなく。
振り返ったシュロには、軽々と地面をほじる圧縮火炎が天空に伸び。
ところどころにある雲を真っ二つに切り裂き、元ある空の景色をずらして見せる。
「むうっ」
が、レクターは自慢気にはならず、シュロに聞いてきた。
墜落した、ブラドを見て。
「シュロ君、どうしてあのバンパイアは、跳ね飛ばされた程度で、済んでいるのかね?」
さすがにシュロも、それには答えた。
「魔界の人々は、どうしてブラドさんに謝らないのでしょうか?」