お怒りの魔王 完結編
…本日、ダロタの残業は、先のセリカの空けた壁の穴を、その時に使った板での修復作業。
ちなみにセリカはどうしているのかというと、ブラドに説明を受けている最中である。
そして、理解を示したように頷いた。
「わかったわ…」
カイリが空間をねじ曲げて見せたように、セリカはダロタの作業している横の木の板を拾い上げて叩き割ってみせる。
「つまり、人間の限界であろう技を見せれば、シュロは相手をしてくれるというのね?」
ブラドは頷きはした。
だが、少し論点が外れていたので補足する。
「いえ、ですから、皆さまが言いたいのはですね…」
セリカには伝わり辛い事なのだろう。
そのためブラドは、カイリの言いたい事を織り交ぜ説明をする。
「つまりセリカ様、今まで『手合わせ』という事をした事がないからこそなのです。
シュロにしても私にしても、手加減が出来ないと思われてしまっています。
その点、カイリ様は、身体を動かす事がお好きなためもあるのか、みなさまは理解を示しているのでございます。
この点は、年季が物を言っていると過言では無いでしょう」
「今からでも無理…?」
「おそらくは…。
今からでも部下でも手合わせをセリカ様から、望んだトコロで…。
とても言い難いのですが、配下の者、周囲の魔王からも、気味が悪がられるだけだと思います」
これもカイリの言いたい事であろうと、ブラドは吟味しながら頷く。
「つまり、諦めろという事?」
これもカイリの言いたかった事でもあるので、ブラドは深く頷いて。
「はい」
自らの失態に気付く。
「あっ」
ブラドの視界が真っ白になり、ダロタは流れ星を見た。
……。
そして、ここはシュロの家。
「おやすみ、母さん」
と、シュロはドアを閉めると、
「……」
そこにセリカが立っていた…。
「うお、あっ...」
シュロは、当然、困惑したが、とりあえずドアを閉めるのは、慣れである。
「どうしたのですか、こんな夜更けに?」
「あら、理由はわかっているでしょう?」
シュロにしても、そこまで鈍感ではなく。
「もしかして、手合わせ...ですか?」
セリカを頷かせる。
「でも、ホントの理由はカイリさんだからですよ」
「...手加減出来るから?」
「いや、そういう意味じゃなくて...。
貴女がカイリさんの様でも、私は手合わせは頼まないでしょうね」
「あら、どうして?」
言葉とは裏腹とは、こういう事を言う。
セリカの影が膨れ上がった。
「ちょ、ちょっと。
そ、それは貴女に怪我はさせたくないといえばわかるでしょうか?」
「あら、私が貴方に遅れを取るとでも?」
目撃者は、被害を知っている。
セリカのあの影に触れれば燃える。
シュロは部屋の片隅に追いやられてしまう。
「それ以前に、わ、私は貴女に手を挙げる事は出来ないんですよ!!」
すると影は止まった。
「叩ける気にはなれない」
完全に影が元に戻ると、セリカは去って行った。
「ふう」
シュロにしてはひと安心と言った感じではあったが、去って行ったセリカは笑顔であった。
そうして、いつぞやか、また...。
「シュロ~、手合わせだ!!」
カイリは元気良く、それはセリカに見せつけるかのように見えるが。
「あれ?」
セリカは大して気にしなくなったという。