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お怒りの魔王 その3

「さあ、シュロ、掛かって来なさい」


「あんなの事があって、貴女は来なさいと言いますか」


 セリカは構うことなく、両手を軽く広げて構えて見せる。


 そんな明らかに隙のない構えを見せるセリカに、カイリは肩を竦めていた。


 「セリカ、もう一度、聞くようだけどよ。


 お前、手加減の意味がわかってんのか?」


 答えを予測していたのだろうかカイリは答えを待たず、何もない空間から別の景色を手で開いて見せる。


 空間を捻じ曲げたのだろうか、そこからはシュロの店が見えたので、セリカは構えを解いて聞いた。


 「何よ、木の板なんて取り出して?」


 「ちょっとさ。


 お前の『手加減』ってのを見せてみ?」


 何となく『結果は見えてるよ』というカイリの心境を感じ取りながら、セリカは板を受け取り。


 「ダロタ、これを上に掲げてなさい」


 そう命じて、数歩ほど下がってカイリに言う。


 「見てなさい…」


 そんな注意は、場に不思議と緊張感が走せた。


 だが、構うことなくセリカは、


 「はっ!!」


鋭い踏み込みを見せ、木の板を手の平で突くと。


 ……。


 木の板ではなく、その後ろにあるシュロの店の壁に穴が開いた。


 「どう?


 これは力のコントロールがうまく出来ないと出来ない技よ」


 自信ありげなセリカの顔に、シュロとカイリは何とも言えない顔で見合わせる。


 「まあ、魔王らしいっちゃらしいけどな…」


 「らしいですね...」


セリカは何となく『違う』というのがわかったのだろう。


 当然、納得が出来ない様子だったので、今度はカイリが手本を見せるようになる。


 「ぶひっ」


 カイリはもう一度、空間を歪めて椅子を取り出し、ダロタにそこに乗ってもらった上で板を構え直させて言う。


 「こういうのが見たかったんだがっ」


 『パキャ』


 見た目でも脆くない木の板を、見事に殴り割って見せる。


 「何よ、ただ叩き割っただけじゃない?」


 「いや、そうだけどさ。


 なあ、シュロ、これを見た上で、お前はどっちに殴られたいと思う?」


 「どっちも嫌ですよ」


 「お前は、さっきの流れでどうしてそう答えるんだ?」


 「冗談ですよ。


 ですが、相手をしてもらえるのなら、カイリさんですよ。


 意外とああいう技を見せられた後には、手合わせをお願いするのはさすがに…」


 「気が引けるわなっ」


 カイリは上機嫌に、シュロの組み付く。


 「ちょ、ちょっとカイリさん」


 「良し、シュロ、続きをしようぜ。


 今度は、避ける癖を忘れんなよ」


 ケラケラと機嫌良く稽古を再開するカイリを見て、


 「それくらい、私にも出来るわよ」


 セリカがそんな事を呟くのは、城に帰ってからの事である。


 「違う、絶対、これ、手加減違う...」


 しかもブラドを、この通り、痛ぶった上である。


 「セリカ様、これがカイリ様の言っていた事なのですよ。


これじゃ、まるで...」


ぜぇぜぇと上司に痛ぶられた部下、さらに言えば従兄弟同士である



「DVじゃありませんか」


 ブラドの指摘はセリカにはショックであった。

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