魔界、不気味なルール その2
さて、このカイリ、何を企んでいたか…。
「カイリ様、今週の報告をさせていただきます…」
ここはカイリの城、カイリの倍ある巨体を誇るサイクロプス、サコンがうやうやしくお辞儀をして、報告業務をこなす。
サコンにしても、本日の不気味さに大きな一つ目が細まる。
「ん…どした?
さっさと報告、始めろよ」
この報告作業、いつもならカイリは面倒臭く聞いているのだけだが。
「…結果、金鉱が誕生しました。
それを、もちまして我が領土の収支は、ウコンの報告書通りのモノとなるでしょう」
「ふ~ん」
今回は、素直に報告書も受け取りなさる。
『んなモン、寄越すな。
面倒くせえな』
それが本来のカイリの態度である、そう言って部下がせっかく作った報告書も受け取りもしない。
ようやく魔王としての、自覚が出てきたのだろうか?
私、サコンはうれしい限りでございます。
そんな喜ばしい光景ではない。
そこにあるのは不気味さだけである。
「おい、サコン、お前、何か失礼な事を考えてねえか?」
「い、いいえ、いいえ。
それでこの金鉱に対して、支出を設ければ、従来の倍の速度で収入を見込めますが。
いかが致しますか?」
「う~ん…。
オレん所で職についてねえヤツって、どれくらいだっけ?」
「ええと、その人達を引っ張るつもりですか、としても大して結果は見込めないでしょう?」
「どういう事だよ?」
「お国柄、みんな肉体労働好きですからね。
そんなわが国が無職な者達はと言いますと…」
「なるほどね、呪術関連の連中が目立つワケだな。
それならよ、セリカんトコから人を引っ張って来れないか?」
「それは難しいでしょう。
さっきの金鉱と、セリカ様の領土、そこは距離が離れすぎていまして…」
「ちっ、上手い話はねえな。
まあいい、サコン、その金鉱はいつも通りで頼むわ。
じゃあ、報告ご苦労だったな」
そんな中、この気味の悪い報告会は終わりに差し掛かるので、サコンも問題ないのかとも、安心を見せる。
が…。
そうはいかないらしい。
「おい、ちょっと待て…」
サコンは警戒しながら、帰ろうとした大きな図体をカイリに向けると、彼女の手には日本刀が握られていたので、一つ目は驚きを隠せないで言う。
「カ、カイリさま?」
「何だよ?」
そう言いつつ、カイリは刀を抜いてニヤニヤと笑っていたので、サイクロプスは怖い怖い。
「まず、手に握られたモノをしまいましょう」
誰も新必殺の実験台に、何てなりたくはない。
だが、カイリにはサコンの恐縮の意味がわからず。
「何を言ってんだ、お前?」
刀を鞘にしまって、サコンに突き出す。
「コレをお前にやろうと思ったんだよ」
『ほれっ』と前に出すので、
「いつも世話になっているからな」
カイリは笑顔で、そう言った…。
……。
どこかで見たような流星が流れたという…。
その翌週。
「なあ、シュロよ」
「はい、何でしょう?」
「気味悪がられた」
「何を突然、言ってるのですか。
まあ、何の事なのか大体わかりますが…」
シュロの呆れに、ムッと来るカイリだったが、さらにそこにセリカがやって来た。
「普段からしない事をやって、気味悪がられて当然よ」
「なんだよ、オレだってな。
普段から世話になってるから、どうしてやろうかと考えていた折に、シュロのやってたのを見てたんだぞ」
「なるほど、ですから、やって見たら…。
気味悪がられたと…」
「うるせ…」
それはカイリが不機嫌にもなるのも無理も無いと、掛けてあげる言葉をシュロは失うが、それに笑顔に上機嫌になるのはセリカである。
「部下の忠誠も満足に得られない魔王なんて、カイリ、貴女の器量もしれたものね」
そんな事を言う。
それを聞いたシュロは、何とも言い難い顔をして、今度はカイリと見つめ合っていた。
「お前…」
こんな展開、何度あった事だろう。
、「だったら、お前もやってみろよ」
『どうせ、お前も出来ないんだぞ』
カイリの問いかけは、こんな変換でもある。
「い、良いわよ」
セリカも半ば自覚があった。
「シュ、シュロ…。
ここに来なさい」
「駄目だ、ブラドでやれ」
魔王も魔王からは逃げられない。
そして、店の奥からやって戻ってきたブラドは、
「何でしょう、セリカ様」
「……」
上司である魔王を、緊張の面持ちで向かえ。
キラン…。
ブラドは回復の腕輪をセリカの前で輝かせて見せた。
「おや最近は良く地上から飛び上がる流星を見ますね」
そんな中、イインチョが入ってくる。