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シュロ、担任を...

 不思議のダンジョン内にて、先にセリカがシュロの姿を発見した。


 「あら、シュロ…何しているの?」


 いきなり声を掛けられ隠れている様子だったシュロは驚きもしたが『しっ』と制するので、セリカは何だろうと身を乗り出して、そこを覗く。


 「あら、あの人、どこかで見た事がある顔ね」


 「自分の学校の担任の、ジラル先生です。


 どうしてこんなトコロにいるのかと思いまして」


 シュロがここで稼いでいる事は、このジラルも知るところである。


 だが、当然、この事は『建て前』である事は、このセリカも知っている事でもある。


 「先生だって、たまには羽目を外してこういう事をしたくなるんじゃないの?」


 「でも、こんなトコロは、深く足を踏み込めば、命だって関わるトコロでしょう?


 あまり立ち寄ってもいい場所ではないのは、誰でも知ってますよ?」


 「ふ~ん、それは貴方が気になるのも無理も無いけど、だったら、貴方に用があるんじゃないの?」


 「そうなんですが、さっき会ったばっかりでそれは無いみたいで…。よ


 それで普段、見慣れない武装をしてダンジョン探索なんて、気になって気になって…」


 「詳しくは聞かなかったの?」


 「それは用があるのかくらいは聞きましたけど…。


 ですが『まあ、そんなトコロだ』と、詳しくは聞けませんでした」


 「ふ~ん、集団で入って何かをしようというワケでもないのわよね?」


 「とても不自然でしょう?」


 そう言っている間、ジラルは小動物モンスターに襲われていた。


 「びゃう!!」


 いつぞや見た、子犬チックなモンスターが、可愛く吠えて襲い掛かる。


 「く、この!!」


 そして、なかなか見ることのない担任の戦う姿に、余計にシュロの疑問は深まるばかりであった。


 「確かに気になるわね。


 いいわ、今日は仕事をしなくていいとブラドにも言っておくから、追いかけてみましょう?」


 そういうセリカの態度に、若干、


 「セリカさん、何か面白そうですね?」


 「あら、そうかしら?」


 顔をしかめたが、ジラルは何とか追い払ったようだった。


 「あら、あの程度に息を切らせるなんて、まだまだね」


 「いや、あれ結構、早いですよ。


 追い払うのに、苦労しても仕方ないと思いますが?」


 「随分と余裕を持って言うのね?」


 「さすがに、この階層は歩き慣れていますからね、余裕くらいはありますよ」


 そう言っている間に、一匹のオークがやって来た。


 「あら、ダロタ?」


 「似てますけど、ダロタじゃありませんよ」


 「あら、シュロ、見分けられるの?」


 どうやら『ブシュッ』とダロタと同様に怒りの様を、はな息で表現させるオークは、セリカには見分けが付かないらしい。


 「それなら、その余裕、見せてもらおうかしら?」


 クスクスと笑いながら、魔王は消える。


 このオークにしてみれば、気配すらつかめていないのだろう。


 意気旺盛とこん棒を二度ほどスイングして見せて、シュロの前に立つ。


 「……」


 シュロは静かに、


 「いつも、ダロタがお世話になってます」


 軽く会釈をした。


 「おや、誰かと思えばシュロだべか?」


 オークも構えを解いて、シュロに挨拶を返し談笑をし始め。


 「はい、これ薬草です。あげますよ」


 「これは、すまねえだね」


 「私には必要ありませんからね。


 こういう道具は、使われてこそ意味があるでしょう?」


 薬草を手渡し、そのオークが腰にある巾着に手を掛けたので、シュロは手を振ってお代はいらないと言うので、オークも喜んで立ち去っていった。


 「最近、ここのオークが薬草使ったり、しぶとくなったって聞くけど、貴方の所為だったのね」


 「何か不味かったですかね?」


 「別に構わないわよ。


 最後の一撃を耐える、そんなモンスターが出てきた理由も面白いけど、貴方がどうやってダンジョン乗りきっていたのかがわかった方が面白かったもの」


 「こういう事が出来るのは、下級層ならではなんですが…」


 「あら、武勇に頼りきりの上級層モンスターも、貴方を通せば、わかってくれると思うわよ?」


 セリカはクスクスと笑うが…。


 「あのセリカさん、私は魔界に長らく勤めてますけど、アークデーモンとか未だに直視出来てないですからね」


 するとセリカはグッと近付き、シュロの腕に両手を絡めた。


 「ふふ、だったら、貴方が強くなるしかないわね」


 「は、離れてくださいよ」


 シュロはセリカを離そうとするが、離れるワケのない魔王の腕力…。


 「腕力?」


 いえ、離れられないのはセリカ様の魔力か…。


 シュロは先生を追って次の階層に足を踏み入れると、周囲の異変に気付いた。


 「何、これ?」


 その階層は、沢山の黄色い帯で垂れ下がっていたからである。


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