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宿題は計画的にやる事が、一番効果的である 完結編

 セリカは教科書を独占した二人を一瞥して、シュロの隣に座る。


 彼女はシュロの宿題に興味あるらしく、彼に邪魔をしないように表紙をめくり上げた。


 「国語、あら、初めて聞く宿題ね?」


 「いつもは先に片付ける課題ですからね」


 「あら、いつも?」


 セリカはニコリとする。


 「……」


 その笑顔に当事者、ヴァンパイヤ、オーク、人間の三人は、嫌な予感がして顔をしかめる。


 セリカにしても感じ取ったのだろう。


 シュロが、どうして『いつも』この宿題を片付けていたのかを。


 「シュロ、わかる問題だけでも、片付けてみなさい」


 この問いかけは、意地の悪い。


 「後は教科書を見ないとわからない問題なんですよ…」


 防壁(いいわけ)も、この魔王の前には無意味だ。


 「シュロ、貴方は何を脅威だと思っているの?」


 その言葉に、


 「……」


 教科書独占組みの、気配が変わる。


 いやいや、ばれてますよ…。


 「これ、何ですが…」


 「ふ~ん、かくして魔王を倒す事が出来た勇者ですが、貴方ならどうやって魔王に対抗しようとしますか?


 適当に述べよ…。


 何これ、『適当に述べる』って、答えなんてないじゃない?」


 「いえいえセリカ様この問題に問われているのは表現力や創造力です答えになっていないのは当然でしょう」


 イインチョの『その証拠に』と言う辺りで察したのか、シュロは問題集の『答え』のページを開いて見せた。


 その問題の答えは、さすがのセリカも困った顔をする。


 「『以下略』って…。


 答えにすら、なってないじゃない…」


 「大事な事は『自分で答えを作り出す』という事ですからね」


 思わずシュロは説明をしてしまい、魔王に、


 二コリと…。


 悪魔の笑みを浮かべさせる。


 「それでシュロは、どうやって『魔王』を倒すつもりなの?」


 思わず黙り込むシュロに、カイリも参戦。


 「それは興味あるな、『私たち』魔王にとって。


 シュロは、どうやって魔王を倒そうとするのか聞きたいなあ?」


 笑顔がとても怖い。


 「……」


 視線が集中しすぎて、シュロの動きが見た目から鈍る。


 「まず………」


 「どうしたの、シュロ?」 


 「どうしたもなにも、自分の一挙手一投足を注目されれば、動けなくもなりますよ?


 これ、帰ってやっていいですか?」


 「シュロ、そんなつれない事を言うなよ」


 魔王は問題集を閉じようする動作すら、手で遮るので、逃げられないでいたが、考え付いた事があった。


 「じゃあ聞きますけど、カイリさんなら、この問題はどう答えるのですか?」


 「そんなモン、真正面から…」


 「自分の能力は人間規格で、お願いします」


 するとカイリは、少し考え込んだ様子を見せて…。


 「まずは魔界に行く事だな」


 「魔界ですか?」


 「ああ、魔王に立ち向かおうとして、結局、地上の人間の規格で、武器を仕入れようとするから、なんだかんだで、この主人公は苦戦してんだよ。


 せめて武器くらい、敵の世界で作られたモノは用意したいわな」


 「カイリさん、それなら問題があるでしょう?」


 「何だよ?」


 「どうやって魔界に行くのですか?」


 「あら、それなら、うってつけがいるじゃない?」


 セリカの曖昧な問いかけに、カイリは少し考えたが…。


 「ああ、そういえばいるな」


 思い当たる節に、シュロは答えた。


 「結局、逃げられないのですか?」 


 ……。


 Q、貴方なら、どう魔王を倒しますか?


 ……。


 A、まず魔界に行き、別の国の魔王に、あくまで交流を深めたいという名目で謁見を頼みます。


 それが通った後、地上で暴れまわっている魔王の悪口、流言を流した後、倒してもらう。


 ……。


 ちなみにそんな解答をした地上の青年は、『魔王なんて、その魔界の王なんだから魔王だろ』と同い年の友達に笑われたが…。


 「なあ、シュロ、オレがいない間に、そういう事をしてないよな?」


 「シュロ、逆に考えると、それは私も言えることよね?」


 軽く鵜呑みにした、二人の魔王の重い視線は数日ほど、日常でも続いたという。


 「だから、この宿題はやりたくなかったのですよ」


 シュロは、二度と国語の宿題を持って来まいと、決心を強めたのであった。

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