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第八話 その3

すいません、更新日を忘れてました。

 「お客さん、今日は散々だったようですね?」


 カジノにあるカウンターで疲れた様子で一休みしていたので、そこにいたバーテンダーに負けた様だと勘違いされたので、『ちがう』と言った感じで否定してしていると、今回の疲労の原因である片割れ、つまりカイリが隣に座ってきた。


 「もう『ちょっかい』出さなくていいんですか?」

 「『ちょっかい』って、なあ…。オレはただ声を掛けただけだぞ?」


 知り合いに声を掛けるのは悪い事ではない。だが、それはやって良い時と悪い時がある。


 それが原因でここで疲れて休んでいるのだから…。


 数分前の事だ…。


 「なあ、シュロ、あの人だかりはなんだ?」

 「『闘技場』ですね。確かモンスター同士を戦わせて勝ち残ったモンスターを予想して配当をもらうっていうゲームですよ。」


 「あら、だったら、強いモンスターに掛ければいいだけじゃない。」

 「そういう強いのは、倍率が低い様になってて、掛けても大して儲からないようになってるんですよ。」


 そうやって、今回の競技が終わったらしく、人がその闘技場から離れていくと、明らかに落胆する人たちが多かった。


 「いやー、今回は負けたな。」

 「まさかハンディキャップマッチとはいっても、鉄巨人に勝ってしまうとは…。」

 「しかし、倒された鉄巨人、身ぐるみ剥がされていたな。災難だよな?」


 今回の戦いの結果は、みんなの予想を外した大穴レースだったらしく、豪商らしい姿をした男が苦虫をすりつぶしたような顔をして憎まれ口を叩いた。


 「…かー、大損だ。あの『オーク』と『ヴァンパイア』め。」


 「……。」

 そして、あまりにも心当たりあるコンビを指す一言、ついセリカと目が合い、闘技場に駆け寄る。

 だがもう『彼ら』は撤収していた。


 「今日は休日にするって言っていたのに何やってるんですかね。あの人たち…。」


 「ま、まあ、休日を謳歌しているって事で良いんじゃないのか?」


 「休日謳歌が追いはぎ稼業ですか、これでも十分な給与を出しているつもりですよ。

 何か自分の経営手腕に問題があるのでしょうか?」 

 

 「お、落ち込むなよ。それより次のオーダー表が出てきたぞ?」


 半ば…というより、ほとんど納得できてはないが、オーダー表を見ると開催側にとっても前回の結果があまりにも予想外だったのか、『勝ち試合』がオーダーされていた。


 「やっぱりホントに強いのは、1.2倍…低いのね。」

 「まあ、穴狙いでこの100倍とか狙う人もいますから、コレが妥当なのでは?」


 「じゃあ、シュロお前はどれに賭けるんだ?」


 やるとは言っていないのに、カイリはやる事を前提に聞いてきた。


 「じゃあ、2番人気の…コレに賭けてみます。」


 だが自分としては興味があった事はあったのでやってみる事にした。


 そして…。


 「凄いじゃないかシュロ。」 

 賭け事に勝ち、何とか格好の付いた事を内心で安心していると、カイリが抱きついてきた。


 当然、気恥ずかしさの身体を外そうとするが、セリカの時もあった様に彼女に対してもどんなに力を込めても離れるワケがなかった。


 ただ、前回と違うのは背中が物凄く寒気が走った。


 「カイリ、危ないわよ?」


 そう言ってセリカは、指で何かを弾き『ブーン』と鈍い音を立てカイリに向かって行った。

 あまりにもゆっくりだったのでカイリは受け止めると思ったが、カイリは手の甲にそれを当てて、真上にそれを弾き、地面に落としてそれがメダルだったとわかった。


 しかも、そのメダル、指で弾いた部分だけ凹となっていた。


 「危ねえな。受け止めていたら手に穴が開いてたじゃないか、オレがコイツに抱きつくのがそんなに嫌なのか?」

 「そうね。むかつくわ。」

 「別にシュロだって、嫌がってないんだし、なあ?」


 こういう時に同意を求められる勘弁してほしい。

 だけどさすがに気恥ずかしいので、解答の変わりに離れるように足掻くがカイリの腕は微動だもしなかった。


 「じゃあ、ここは一つ勝負しないか?」

 「どういう事よ?」


 言っている間にも明らかにセリカ本人の殺気で空気が変わっていっているが、カイリはさすが魔王というトコロかそんな事も構わずこういった。


 「ここはカジノだ。次の闘技場の試合で、オレが勝ったらシュロを貰っていく。」


 「ちょっ、何…かっ!!」


 あとのセリフは『勝手に決めてるんですか?』だったが、カイリは首を絞めて…というより閉め、何も言わせなかった。

 というより、初めて首を絞められて、苦しさより痛みが走った。

 

 「そうね。じゃあ、私が勝ったら、あなたはこれから私の国に来るの禁止ね。」

 

 そうしてセリカは自分の要求を言って、その賭け事に乗る事にしたのだ。


 問題はここからだった。


 「おーいっ!!」


 カイリは気合十分と言った感じで、中央にいる自分に声を掛けたのかと思いきや、闘技場の彼女の賭けたモンスターに声を掛けた。


 それを発見した筋肉質のモンスターは、明らかに驚き、動揺しながらそちらを見上げたのを見て、カイリはさらに言った。


 「今回の戦いはさ、こちらにも大事な勝負なんだ。

 だから負けるなよ〜。

 負けると絶対、許さないからな〜。」


 周囲には『普通の応援』の言葉の様に思えるだろう。

 だが、王様を前にした。

 そこにいる3匹のモンスターは一同は、ワケもわからないであろうがお互いに向き合って頷きあった。


 『出来レースしとけば、いいんじゃね?』


 その程度の話し合いが行なわれていたのであろう。


 だが…。


 一つ目の小さな魔法使いのモンスターが『何か』を発見した。

 というより、『してしまった』という方が妥当だろう。


 事の重大さをいち早く察して、モンスターにしか聞こえない声を出して自分より強いモンスター2匹に気付かせた。


 硬直した3匹、セリカはカイリと違いただじっと見つめていた。


 困惑する2匹、幸いその一つ目のモンスターは難を逃れたらしいが、当然、困惑していた。


 『絶対、許さない』といったカイリは、外れたらどんな仕打ちをするのだろう。

 『絶対、何かする』セリカは、外れたらどんな恐ろしい事が待っているのだろう。


 考えたらこっちの胃が痛くなって来た頃。開始のゴングが鳴ったのであった。


 そして、その結果…。


 「両者ダブルノックアウトでしたよね?」

 「いや〜、結構良い所まで、行ったと思うんだけどな…。」


 ああ、あの時に運良く残った一つ目のモンスターの涙の意味を、この明るく笑っている魔王は解っているのだろうか…。


 いや、わからないだろう。


 「それでカイリさん、参考になりましたか?」


 とりあえず、本題を聞いて見た。


 『カジノに行ってみたい。』


 そんな事を軽く言っているがカイリの事だから、自分の国にカジノでも建てるつもりなのだろう。


 しかし、カイリから出た言葉は意外な答えだった。


 「いや、ならなかったな。」


その4に続きます。

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