宿題は計画的にやる事が、一番効果的である
「とうとう持ち込んじゃいましたか…」
シュロは目の前にある本を相手に、ため息を付いた。
彼が何をしているのか、それは言わずと知れた。
宿題である。
学校に行っているから、宿題は出る。
どの世界にもある、当然の定義である。
シュロとて、何度も片付け切れない宿題を魔界に持ち込んだ事はあるのだが…。
『今度ばかり』は、さすがに気まずさを感じてならなかった。
「ここの小説作家が逆お気に入りユーザーの数が、気にならない作者がいるワケがないだろうが!?」
そんな中、怒声と共にブラドが入ってきた。
「って言うより、誰に怒っているのですか?」
「ああ、シュロか。
いや、何、どこからか『私は、逆お気に入りユーザーの数は気にしません』なんて、きれい事が聞こえてきたモノだからな。
思わず怒鳴って、しまったんだ…」
「また、多くの人を敵に回して…」
「こちらにしても、オブラートに包んで言っているつもりだぞ。
『逆お気に入りユーザー』を別の言葉に置き換えてみ…」
「はいはい、危ないですよ、ブラドさん。
消されますよ、作者に…」
「おお、いかんいかん…。
ところでシュロ、それは宿題か?」
話題を変えようとブラドは、シュロの身近にあったモノを見て聞いた。
のだろうが、シュロは嫌そうな顔をした。
「どうした、シュロ?」
「こういう宿題、私は何度か魔界に持ってきたのですがね。
今回ばかりは、私も『危ない』かな…と思いまして…」
「おいおい、お前は学業と仕事を両立させる事は、セリカ様も承知のはずだ。
学業の方は、お前次第なのだから、しっかりしてもらわんと困るぞ?」
ブラドは年上らしい、注意をする。
「まあ、そうなんですが…」
「お前がそんな表情を見せるとは珍しいな?」
ブラドは興味深く、シュロの宿題の内容を見るが、
「国語…。
何で、お前は困っている?」
その悩みは理解できなかった。
「苦手科目なのか?」
「いえ、そういうワケじゃないのですが…。
とりあえず、ブラドさん、本の内容を読んでくださいよ」
「なんだ、この見た目はヴァンパイヤ、中身はアキバ系おっさんの俺に何をさせようという?」
「何ですか、その駄目な内容は?
でも私の悩みは、これを読んで見ないとわかりませんよ」
そう言うシュロをみて、ブラドは眉間が寄るが、確かに言い分は通っているので教科書を受け取る。
内容はこんな感じである。
ある日、勇者が現れ…。
その最中に魔王がいかに強大かを思い知り、その勇者は希望を失いかける。
しかし、仲間や出会った人々の期待を胸に、何とか勇者は希望を失う事は無く。
伝説の剣を手に、魔王を立ち向かう。
そこで物語は途中ではあるが、教科書らしい終わり方をして終わっていた。
だが、ブラドは眉間を寄らせたまま。
「うん、不味いな」
「私の危惧がわかりましたか?」
「まあ、セリカ様は、そういう事は気にはしないだろうが、少なくとも魔界に持ってくる宿題ではないな」
「私としても、『国語』だけ先に済ませていたのですが。
すっかりやっていたものと勘違いをしていまして…」
「ただでさえ群雄割拠している魔界に、こういう文体を持ってくるのは不味いな…」
ブラドは一緒に教科書を読んでいたダロタを眺める。
「おお、お怒りなさってる」
その内容でのオークをあっさり倒されているのだから、ダロタは『プキー』と憤慨していた。
「とりあえず、急いで片付けますね…」
シュロとしては、最善の選択をしたのだろうが、この話はまだ一話目である事は、読者にしかわからない事である。
「地上の宿題ですかそれは興味深いですね」
いつの間にやってきたのだろうか、そこに光るメガネ、ではなく、おデコがあった。