魔王にも知らない事もある その1
ここはカイリの城、そこの門番の巨人は目を丸くしていた。
「カイリに様があるのだけど、取り次いでもらえるかしら?」
最初、この台詞の意味がわからなかったからだ。
いや、わかっているのだが…。
本来なら目の前にいるこの魔王セリカは、何度もこの城を訪れている。
空を飛んで窓から侵入したり、魔法を使ったりなど、それは様々な方法で。
本来なら、こんな門番を相手になどしないのだ。
それが魔王なのだ。
この困惑は当然だろう。
そして、後ろからやって来た魔王も。
「なんだよ、セリカ、気味の悪い登場の仕方しやがって…」
カイリも、あらかじめ知らせがあったりしていたのだ。
警戒をして部下を下がらせる間、セリカは何やらを時空をネジ曲げで取り出した。
「はい、コレ」
「なんだ、コレ?」
「手ぶらでやって来るのは、失礼でしょう。
だから、お土産。
今のシュロの店の地域の特産品」
何の変哲もない、何やら五角形のゲームの駒を放り投げ、カイリに渡す辺りは、まだ、セリカらしいが、
「何だよ、怖えよ、なに企んでんだよ?」
カイリは気味が悪くて仕方がないのは、言うまでもない。
とりあえず謁見の間に招くが、カイリは警戒を解けないでいた。
「何だ、今回は最終回なのか?」
「それは違うわ。
ただ…」
次の一言で、
「貴女を評価したいのよ」
カイリの気分が悪くなるのは言うまでも無い。
さすがにセリカも察したらしく、肩を竦めながら事情を説明する。
「カイリ、貴女はいつも私のシュロを、気に掛けてくれているわね?」
「そりゃあ、アイツを見ていると楽しいからな」
「普通、魔王と呼ばれるモノは、独自の横暴さ故に警戒すべきのだけど、私を含め、貴女のその寛大さは。
シュロの村、地上の人の警戒心を抱く事無く接せれる態度は、尊敬に値するわ」
「いやあ、それほどでもな」
明らかに褒められているので、少しカイリは照れくさく、身体がくねる。
「そして、シュロのお母様には、私は警戒されてはいるけど、貴女はまさに性格が講じて好かれているのよ」
「で、でもお前ほどじゃねえよ。
お前は地上じゃ、『絶世淑女』って呼ばれてるじゃねえか?」
嬉しそうにカイリはおだて返す。
「それだから私は、近寄りがたい雰囲気があるのでしょう?
貴女は酒場でも普通にお酒に誘われていたりするじゃない?」
「いやいや、お前ほどじゃないって…」
お互い褒め合い、おだて合うので、飽き飽きしたカイリは苛立って叫んだ。
「あー!!
いい加減にしろよ!!
最初ッから、気味悪いよ!!
何を企んでいるんだ?」
そしてセリカは、この態度。
「何も企んで無いわよ」
堂々とおだてる。
「ただ純粋に貴女が、凄い人だと言うのを知ってほしいのよ」
さらに出鼻を挫かれ。
「やめてくれ、いい加減、胃潰瘍になる」
「まあ、そうね…」
胸を抑え出したカイリを見たのか、セリカは本題に入る。
「そんな地上でも広域的な好かれ方をする。
貴女だから、聞きたい事があるのよ」
心なしかセリカが緊張するので、カイリも緊張してしまう。
「貴女、シュロの妹を見たことがある?」