第八話 その2
諸事情がありまして、遅れてしまいました。
すいません。
そして、当日…
家には『友達の家に泊まりに行く』という名目で、シュロは不思議のダンジョンの入り口へと足を運ぶ。
何故なら、そこが待ち合わせ場所だからだ。
落ち合う時間まで、30分も早くその場所に向かう。
他の人からみると、待ち合わせとしては早すぎると思うだろう。
続いて言えば『デートは初めてなのか?』なんて思われたりするだろう。
……。
…確かに初めてだ。
だけど相手は『魔王』だ。
何かの拍子で、この世界を破壊されでもしたら…
…冗談じゃない。
そんな事を考えながら自分の指定した待ち合わせ場所に向かっていると、カイリが手を振っていた。
「あっ、来た来た。今日はよろしくな。」
なんとその魔王は、30分も前に待ち合わせ場所にいた。
「あれっ、時間、間違えた?」
「いや、お前は間違えてないよ。オレが早く来たんだ。」
「そうよ、貴方が気にする事はないわ。」
そして魔王は、もう一人現れた。
「あら、貴方の雇い主の私がここに来てはいけないの?」
「…いや、別に構わないですよ。それじゃあ、行きましょう。」
半ば飽きれながらセリカの顔を見ると彼女は不思議そうな顔をしてこんな事を言った。
「何言ってるの、もう着いたのよ?」
セリカはいつの間にやらカジノのある街へと移動呪文を唱えていたらしい。
移動呪文というのは空を飛ぶ事を知っているのだが、セリカはそれを必要とせず、そのままその場所に辿り着いたのだ。
「…どんだけ魔力高いんですか。」
そんなでたらめな魔力に自分は呆れていると、『あら、私は魔王よ?』というごもっともな意見で片付けられたので、取りあえずカジノのある建物に入る事にした。
「しかし、見事に…。」
セリカは清楚な服装を着ており周囲を引き付けて歩く。
それに対し、カイリはそのボディーガードといったトコロか、黒くフォーマルで決め、周囲を引き離しに掛かっていた。
だが周囲の視線それだけを覗くと、この街に相応しい服装で歩いているのには違いなく、誰も『魔王』だとはわからないと思った。
「…溶け込んでますね。」
差し詰め自分はこのお嬢様の召使いだろうか、素直にそんな感想を口にした。
「まあ、俺たちは魔王でも人に危害を加えるために地上に来たワケじゃないんだ。
紛れ込むような変装…なのかな、まあ、それくらいはするのは普通だよ。
そんな事よりシュロ、それは何だ?」
『何だ?』の正体はおそらくカップに入れた『コイン』だろう。
「あら、それが噂の小さな…」
「似てるけど違います。これがカジノで使える『通貨』なんですよ。」
「通貨…、普通のお金は使わないのか?」
「はい、直接お金を使って賭け事となると、計算する時に難しい様ですよ?
だから20Gを1枚のコインにして、さっき受け付けに行ってきて、100枚、作ってきたトコロなんですよ。」
「あら、私、お金出してないわよ?」
「いや、構わない。こっちのおごりという事にしてください。」
そういって適当に三等分して、カイリとセリカに分けてあげるとセリカは『そっちの方が多くない?』と言ってきたので、自分のを手渡しながらスロットを選ぶ事にした。
「おい、シュロ、これ壊れているだろ?」
しばらく、数回スロットで遊んでいると、カイリはそんな事を言ってきた。
「壊れてないでしょう、もしそうだったらこんな感じで『故障中』ってなると思いますよ?」
そう言ってカイリの隣にあるプラカードを指差すが、続いてセリカが文句をいった。
「いえ、私も壊れていると思うわよ。
さっきから『7』を狙って、『STOP』を押しているのだけどさっきから揃わないもの。」
魔王の動体視力を持ってすれば、そんな事も可能なのだろう。
「ああ、こういうスロットって、『7』揃わないんですよ。」
「おいおい、それじゃあ、損をするじゃないか?」
「ですから、こうやって…」
言いながら『小役』を辛うじて揃える事に成功しながらこう言った。
「回転数を稼いで、特定のアクションを待ってから『7』を揃えるのが基本ですかね。」
セリカは『なるほど』と頷きながら、コインを入れて小役を揃えるように狙いを定める。
「あっ…。」
魔王、敗北。
「……。」
気が付くともう一人も、失敗していた。
「…むかつくわ。」
「奇遇だな。セリカ、オレも手伝ってもいいか?」
明らかに壊しに掛かった魔王二人。
「ちょ、待ってくださいよ。難易度とか設定されていると思うんですよ。
それに壊したり騒ぎを起こさないって約束したじゃないですか。
いたっ、いたたたたっ。」
セリカの放電を軽く味わいながらシュロは慌てて止める。
どうもスロットは、魔王たちにとっては馬が合わなかったみたいなので、他を当たる事にした。
その3につづく…。
シュロの性格が決まってないから、文章があやふやになってるね。
近々、性格決めようと思ってます。