表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/155

収穫祭後の魔王 その3

 魔法を唱えたのか自分達を含めて、セリカ、カイリは姿を消して、しばらくすると、この森に静寂が戻った。


 けもの達はまず視覚で周囲を確認して匂いを嗅ぐと、ようやく辺りに平穏が戻ったのを確認したのだろう。


 ぞろぞろと日常、そこには人間のいない動物達だけの世界が広がろうとするが、


 一匹が『それ』に気付いた。


 「ふっ、ふっ、ふっ…」


 魔王カイリが本懐を成さんと不敵に笑う。


 「……」


 それに顔色を変えて逃げ出したモンスターを見て、カイリは叫ぶ。


 「あっ、こら、待ちやがれ!!」


 「駄目よ、カイリ!!


 相手は『逃げたら終わり』なのよ」


 猛然と追い掛けようとするが、セリカはそれを止める。


 それは再度、動物大移動を避ける事となったが、今度はセリカはモンスターに挑む。


 「そうよ、相手は逃げたら、終わりなの…」


 ゆったりとセリカは、その小動物の群れに迫る。


 「……」


 それはもう、じりじりと…。


 「セリカさん」


 だからこそ、言わなければならない。


 「シュロ、何?」


 「はっきり言って、めちゃくちゃ怖いですよ?」


 セリカに睨みつけられるが、その証拠というか、とうとう大移動が始まる。


 「ちくしょう…」 


 「カイリ、次、行くわよ」


 諦めず突貫するが、良く言ったモノである。


 魔王からは逃げられない。


 それは絶大な力を持ってる魔王が、その絶対的な力の差を見せつけ、戦う気をなくした相手を、さらに絶望を与えるための名文句であろう。


 だが、この名文句が負ける理由になるとは、誰が思ったのだろう。


 「待て、待ってくれ~」 


 「こうなったら、奥の手よ!!」


 イラだったセリカはとうとう相手を魅了する魔法を唱える。


 そこで、ようやくセリカの元に数匹のモンスターが寄って来て、頭を撫でるセリカを見て。


 カイリは言った。


 「セリカ」


 「何よ?」


 「それは、違うだろ」


 「…魔法が切れたら野生に戻るくらい、わかってるわよ」


 「お前の気持ちは、わからんでもないがな」


 そして、とうとう二人は膝をついていた。


 「二人とも、そこまで落ち込まなくても」


 「そうですよ。


 セリカ様、そもそも魔界とは、力社会が主でしょう。


 そんな些細な事…」


 「ブラド…」


 セリカはブラドの背に手を置いた


 「馬鹿野郎!!」


 そこにカイリが思い切り、心臓を殴りつけた。


 空気の振動がここまで伝わってくるほどの、威力をセリカが一切、逃がさないという純粋威力の一撃だった。


 「今、自分の膝元に猫を置く事にどれだけ重要なステータスか、わかってねえようだな?」


 「そうよ、あれは魅了されているから膝の上に乗っているわけじゃないのが、今、わかったのよ。


 つまり小動物に怖がられない事は、魔王にとって別のステータスとなったのよ?」


 「まったく、わかってねえヤツだ。


 自分達にないステータスが有るか無いかで、魔王はな自慢できるんだよ」


 この騒動が後に他の魔王たちにも及び、魔界を揺るがす事になるとは、自分は知る由もなかったが、


 「す、すいません、私としてはですね…。


 ま、前に私を主人公にした、続き物があったじゃないですか、どうして私の時は認知されなくて…。


 お二人の時は、こう続くのかなと…」


 「あ?


 んな事知らねえよ」


 カイリの一言に、ぐったりと倒れたブラドは虫の息だった。


 「というより、良く生きてますね?


 で、ですけど、こうも予想以上に嫌われるとは思いもしませんでしたよ」


 そんな事を言うと、魔王二人もさすがに睨むが、


 「きゅう?」


 いつの間にやら、足元に擦り寄ってきたモンスターが毒消し草を咥えて見上げていた。


 「くれるの?」


 何も答えなかったが、そのまま地面に置いて去っていくのでそうなのだろう。


 こうなるとさらに落ち込むのが魔王陣営である。


 「シュ、シュロ。


 お前、うらやましい、うらやましいぜ」


 そして、カイリは自分も続こうとしたのだろう。


 だが睨む、いや、見つめるだけで『群れ』が遠ざかるのだから、くるりとこっちを見るカイリに一斉に視線を逸らす、セリカ側、ちなみにブラドも倒れたままであるが首を曲げるほどである。


 「カイリ、心境は察するに値するわ」


 珍しくセリカが、カイリをなだめていた。


 「ですが、こうなると次の手段を講じないといけませんね」


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ