収穫祭後の魔王 その2
「じゃあ、カイリさん、言ってみましょう」
「お、おれ!?」
カイリは珍しく驚くように自分を見る。
「大丈夫ですよ。
基本はエサで釣って、気を許したトコロを撫でれば?」
「おう、エ、エサで釣る…んだな…」
正直、すでに、カイリの様子がおかしかったので。
「予感は的中するでしょうね…」
「緊張で魔力と妖気が膨れ上がって、漂ってるからな。
ありゃ怖いわ…」
毒消し草を頬張りながらブラドの言うように『びゃあああああ!!』と響き渡る叫び声。
どうやら魔界は環境が違うらしく、何も起きる事はなかった。
そして、カイリ。
「ちきしょおい!!」
「なんで!?」
カイリはブラドに八つ当たり、空へと打ち上げる。
しかし、この繰り返しを五回ほどすると、さすがに魔王相手でも人間は口を挟む。
「カイリさん、大変、言いにくいのですが…」
気がつくと明らかに周囲から、魔物の気配がなくなっていた。
そして空から、やって来るのはもう一人の魔王である。
「遠目から見てたけど、円状に遠ざかりが出来てるわよ?
新手の魔物避けの呪文?」
「セリカさん、実は…」
セリカに事情を説明すると、カイリは渋い顔をする。
「馬鹿馬鹿しい…。
そんなの簡単な事じゃない」
「うるせえよ…」
セリカはこれ見よがしにと、見せ付けてやろうとするのは予想は出来たのだろう。
セリカは気配を殺して、モンスターを捕まえ、頭を撫でる。
どこぞかで見たような、そんな風景、まずはカイリ。
「セリカ…、お前もなんだな…」
「え、何、こういう事でしょう?」
その思いもしない反応に、セリカは戸惑いながらシュロ達に顔を向けると、
くい~。
ブラド、シュロ、ダロタと、視線を合わせようとしなかった。
「しばらく休憩してから、行きましょうか?」
そうして、また、この周囲に平穏が戻ったので、
「何よ、あれ?」
「な、な、違うだろ?」
『わしゃわしゃ』とお腹を撫でるシュロを見て、二人の魔王は感嘆していた。
「やるわよ、カイリ?」
「おう!!」
珍しく結託を見せて…。
いたのだが…。
悪い予感というのは、良く当たる。