収穫祭の魔王 その6
力が上の相手に助けを求め、カイリも止めようと立ち上がるのが見えたが、
「うおあああ」
親モンスターに自分の襟首を咥えられ、高く持ち上げられてしまった。
「た、助けて~」
それを見たカイリは、
「あっははは…」
大爆笑だった。
おかげでしばらく、このモンスターと村の中を『ずしん、ずしん』と闊歩する羽目になる。
「シュ、シュロ~」
どこかで聞き慣れた、母の声もする中。
「今だ!!」
自分を助け出そうとしたのだろうか、ニルバス村にいる冒険者達が総出で一斉に槍で、背後からモンスターを突いたのだった。
「……」
うん、突いたんだ。
妙な沈黙が流れた。
その時、そこにいた冒険者達には、こんな実感はあったのだろう。
こんな時に一人、冷静で空気のヤツがいる。
「あっ、これ、効いてないな」
誰が言った、この台詞。
それにゆったりと、振り向いて聞いて来るのは当然だろう。
『痛いやろ?』
「す、すいません…」
しばらく身振り手振りで伝える、冒険者達とモンスターのやり取りをしばらくお楽しみください。
『謝って済む問題ちゃうやろ、人様のケツをヤリで突きおってからに…。
なんや人間って、正面から掛かって来れん生き物なんか?』
「いや、やっぱり怖いというか…」
『ああ!?』
「すいません、やっぱ正々堂々ですか…ね?」
『あんな、ワシ、人間のこんなトコが嫌いやねん。
結構、痛いんぞ、コレ?
お前ら、痛いの知っとって、やっとるんやろ?
たまらんで、こっちは?』
「すいません」
『まあ、やっぱなめとるよ、お前ら。
さっきから「すいません」ばっかやろ?
ワシ、やろうと思えば「ガツン」いけるねんで?
いわせたろうか?』
「いやいや、結構です」
「何でお前ら、言葉通じないのに、意思疎通が出来るんだよ?」
カイリの一言に、自分だけ首が曲がり、おかげで自分は開放した。
一安心するのは、まだ甘かった。
「逃げろ逃げろ逃げろ!!」
思い切り暴れだしたのだから、大惨事である。
「まるでその逸話どおりに、モンスターが暴れてるじゃねえか?」
屋台が壊される中でも、カイリはケラケラと笑っていた。
「カイリさん、笑い事じゃないですよ」
「どうして笑い事じゃないんだよ。
祭りはこれから何だろ?
確か元となった話を再現して、シュロ達が追い返すんだっけ?」
「貴女は魔王ですね?
いくらなんでも当時でも、あんな大型が相手じゃなかったでしょう?」
「だろうな、この辺はあのベビーモンスターを、立派に一人立ちさせるための環境には適しているからな。
ここの連中も、それを相手にしたと見ても、おかしくねえ話だな」
「じゃあ、どうしてあんなのがいるのですか?」
「いやな、たまにいるんだよ。
子供が心配だからって、中々、子離れしない親が。
さまざまな理由があるとしても、普段は影で見守ってるだけなんだがな。
一体、何が原因なんだろ?」
カイリは『きょとん』としていた。
「悪気がないのは、貴女の悪意なんですか?
何とかしてくださいよ。
このままじゃ、祭りが終わってしまいますよ」
「しゃあねえな…」
カイリはようやく重い腰を上げたのだが、
「どうしたのですか?」
そのまま動きが止まっていた。
「どうしたのですか?」
「あれ、セリカじゃねえか?」




