収穫祭の魔王 その5
いや、一概にカイリは責めれないだろう、その鳴き声の原因は、自分達にあるのだ。
自分には専門的な知識は無いが、確かにそのモンスターは泣きそうな雰囲気があった。
しかし、物事には進行というモノがあり。
大人たちは。
「あっ、魔物が来たぞ!!」
無常にもそれに乗っかる性質があり。
魔物使いのおじさんも、異変を感じ取ってはいたのだろう。
だが、何も知らない子供というのも、
「おのれ、化け物。
俺たちが、追い返してやる」
残酷である。
恥ずかしい台詞だが、大勢の子供がそんな台詞を投げて、囲むのだから追い詰めるには十分だろう。
「ぴぃぃ!!」
明らかにこの遠吠えは、場の空気を凍りつかせた。
「い、いかん」
慌てて魔物使いは、このモンスターをなだめに掛かる。
「どうしたんですか?」
「助けを呼んだ」
思わず寒気がするが、ゲンタは得意そうに言う。
「へん、あの程度のモンスターなら追っ払えるよ」
クライトも同じように頷くが、魔物使いは真っ青になっていたのがとても気になったので聞いてみた。
「あのおじさん…」
この時、自分でも嫌な予感がしてならないのは言うまでも無く、魔物使いのおじさんに聞く。
「何を呼んだのですか?」
「だから助けを呼んだんだよ」
「子供と、親、どっちかと?」
自分の問いかけは、的を得ていたのだろうか?
「キミ、よく知ってるね?」
「いや、あれ名前に『ベビー』って付いてるじゃないですか?」
ドスンッ…と、重量感のある足音が聞こえてきた。
「動物系のモンスターって、結構、有名でしょう?」
村人が逃げてきた後から、やって来たのは『ベビー』から『キラー』になったモンスターだった。
この子の親であろうか、自分の膝くらいの幼年期に対して、大人になれば『それなり』に大きくなると言われて、自分の体格くらいを想像する…。
人はまだ甘い。
これは二階に届くのではないのかと思われるほどの体格となる。
それを見て、さすがにゲンタ、クライトは我先にと逃げた。
それを親は一度、追おうとするが、やはり気になるのだろうか、子供に目をやった。
そこで逃げ遅れたのは、魔界で慣れてしまったからだろう。
おかげで視界に入った自分を見るなり、
『お前か、ワシの子供を泣かせたんわ!!』
明らかに殺意のある視線で、自分を睨みつけていた。
殺されかけようとすると、人間、言葉が通じないと言えど必死である。
『いや、違いますって!?』
しばらく身振り手振りで、必死に伝える様をしばらくおたのしみください。
『じゃあ、何でコイツが泣いとるんよ?
手を出したんやろが!?』
『出して無いっすよ!!』
『嘘付けや!!』
『嘘じゃないですって!!』
『お前、ワシらの鼻、なめとるな?
じゃあ何でお前の身体から、コイツの匂いが染み付いてんねん!!』
『撫でてただけですよ!!』
『それを俺らの世界じゃな、叩いた言うねんぞ!!』
『誤解ですよ!!』
「何で意思が通じてねえのに、シンクロ出来るんだよ?」
カイリは相変わらず『ケラケラ』と笑っていた。
『もうええ、ちょっと来い、お前!!』
口をあんぐりと開けたので、咥えようとしたので思わず叫ぶ。
「ちょっと、カイリさん助けて!!」