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1-5

 ラグナロさんに連れられて、街の中を歩いている。

 お城のベランダから眺めているときにも思ったけど、本当に中世のような街並みだった。

 レンガ造りの家が建ち並び、テントを張った露天からは威勢の良い声が響き渡る。

 テレビの中に迷い込んでしまったかのような錯覚に陥るけど、僕の知るテレビの中とは大きく異なっている点がある。

 右を見ても女の子。左を見ても女の子。

 この異世界は見渡す限り女の子ばかりだった。


「ねえ、ラグナロさん。ここって女の子が凄く多いですね」


 前を歩くラグナロさんに話しかけても返事はない。


「あの~~ラグナロさん?」


 やっぱり、返事がない。

 まだ僕のこと警戒しているのかな?

 前に出て彼女の顔をのぞき込んでみると、


「にはぁぁ」


 ラグナロさんはにやけた顔で自分お腹を撫でていた。


「ラグナロさん………?」

「はっい!」


 正気に戻ったラグナロさんは咳払いを一つ。


「それで、どうされましたでござるか、姫様の後客人?」

「この街って女の子がもの凄く多いですよねって思って」


 リンジュさんとは無理だったけど、常識人ぽいラグナロさんにだったら、話が通じるよね。

 今さっきのにやけ顔は見なかったことにするから、お願いだよ。

 話よ、通じて!


「………女の子とは何のことだ?」


 うわああ、お姫様で超箱入り娘のリンジュさんに続いて、ラグナロさんにも話が通じなかったよ!


「いえいえ、だから、女の子ですって」


 もしかして、この異世界だと女の子って言葉は存在していないで別の言葉だったりするのかな?

 というか、考えてみれば、ここって異世界なのに何で日本語通じているんだろう?


「そのような言葉は、拙者は存じ上げない。それよりもつきましたぞ、ご客人」


 足を止めると、そこには年期の入った宿屋が建っていた。

 ドアを開けると鈴の音色と淡々とした声が響いてきた。


「はい。いらっしゃいませデス………って、ラグナロ君か。おひさデス。こんな時間に帰ってくる来るなんてめずらしいデスね」

「ただいまでござる。タロウ殿。本日は異世界からのご客人を連れて参った」

「異世界からご客人デスか!」


 カウンターらしき席に座っていたゴスロリ姿の女性が、勢いよく立ち上がって僕の前までやって来た。


「う~~ん。これは、これは、これは、デスね」


 甘いシャンプーの香りが鼻腔を擽るような至近距離でマジマジと顔を見られる。

 リンジュさんやラグナロさんといった細身の美少女を見続けたせいか、タロウさんは少しだけ肩幅が広い気がするけど、二人に負けず整った顔をしている。

 でも、ここは異世界だから感覚が違うかもしれないけど、こんな美女なのにタロウって響き、僕には違和感しか感じないよ。


「タロウ殿、顔が近いでござるよ。姫様のご客人だ。宿代はいつものように王宮が支払いをするので、くれぐれもご無礼のないようにお願い致す」


 ラグナロさんが深々と頭を下げてたから、僕も一方後ろに下がってお世話になりますよと頭を下げた。


「了解なのデス。それにしても、異世界からのご客人とは珍しいデス。どうやって、こちらにやって来たのか、後でじっくりお聞きしたいデスね」


 顎を撫でながら、タロウさんが値踏みでもするかのように僕のことを観察している。


「あはは。お手柔らかにお願いします………」

「そう言えば、ルルル殿は一緒ではないないのでござるか?」

「ルルル? うん、そうなのデスよ。お昼過ぎに遊びに出かけてから、まだ戻ってきてないのデスよ」


 ラグナロさんの助け船によって、タロウさんの興味が僕から移動した。

 ほっとため息を漏らすと同時に、入り口のドアに取り付けられたベルが再び鳴り、来客を告げてくれる。


「ただいま~~。タロウお姉ちゃん……ってラグナロお姉ちゃんもいるんだ」


 入ってきたのは、小学生低学年ほどの幼い少女だった。長い髪をツインテールにまとめ上げて、左右のぞれぞれを向日葵色の宝石がついた髪留めで結び上げている。


「うああああああ。タロウお姉ちゃん、そこの変な格好のお姉ちゃん、誰、誰? もしかして、ルルルの新しいお友達なの?」


 入ったときから元気一杯だった少女は、全速力で僕の元まで駆け寄ってくると丸々としたした瞳を輝かせながら、僕の顔を見上げてくる。


「初めまして、ルルルって言います。分からないことがあったら、ルルルに何でも聞いてもね」

「申し遅れたけど、自分は、ウヅキ・タロウ。よろしくデス」


 ルルルちゃんの後ろでゴスロリ娘さんが手を挙げている。


「ウヅキ・タロウ?」


 何その、異世界に似つかわしくない日本語的響き。

 ゴスロリ姿の女の子にタロウなんて猫にポチとつけるようなものだよね。

 ねえ、キミの名前はソレで良いの?


「それで、キミの名前は? 自分はもの凄く興味あるのデス」

「あ、ルルルも知りたい~~!」


 値踏みをするように目を細めるタロウさんと、太陽のように元気一杯のルルルちゃんが僕を見ている。

 どうしてこんな所に来たのか分からないけど、彼女達と僕はこれから同じ屋根の下で一緒に暮らすことになるんだ。

 だったら、最初の挨拶って大事だよね。


「僕は、代々木 翼です。これからよろしくお願いします」


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