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3-9


 何かが動く気配で目が覚めた。

 まだ窓の外は暗い。

 覚醒が浅い頭で、思い起こす。

 僕は色音 鈴寿さんと出会い、真実を知った。

 自暴になっている僕を鈴寿さんは助けてくれて、彼女の部屋に一晩お世話になる事になった。

 オトメのことを彼女に語っている間に睡魔がやって来て、眠りにつく寸前に鈴寿さんは意外な名前を………。


「!?」


 ぼんやりとしていた頭が急に覚醒した。

 起きあがり、鈴寿さんが寝ているであろうベットに目を向け、僕は言葉を失った。


「ごめんなさい。自分のケリは自分でつけてきます」


 ベットの縁に、僕に見せつけるかのように置き手紙がはり付けられた。


「鈴寿さんっ!!」


 もうこの部屋にはいない、彼女に向かって叫びかける。

 そして、眠る前に思いついた可能性に今さらながら、気づいた。


「くっそっ」


 鈴寿さんはオトメの存在を、そこにいるタロウの存在を僕たちと出会う前から知っていたんだ。

 それは、鈴寿さんが異世界を生み出せる能力を持っていたからじゃない。

 鈴寿さんはきっと前に、ルルルちゃんと出会っていたんだ。

 地球からオトメに返ってきたとき、ルルルちゃんは言っていたじゃないか。


『向こうの世界で、ルルルは、リンジュお姉ちゃんのような優しいお姉ちゃんと出会ったんだよ』


 あれは比喩とかじゃなかった。

 言葉の通り、リンジュと瓜二つの容姿を持つ、鈴寿さんのことだったんだ。

 鈴寿さんと出会い、タロウの過去を知り、僕はオトメが出来るまでの事に気を取られすぎていた。

 僕がオトメに行ってからも時は流れ、世界は変わり続けているんだ。

 地球からオトメに返ってきたルルルちゃんは、向日葵色の髪飾りを持っていなかった。地球に忘れてきたんだ。


 何処に?


 知らない人が見れば、ただ髪飾りだろうが、あの鍵の使い方を僕たち以外にも知っている人がいた。


 色音鈴寿。


 ルルルちゃんと出会った彼女は、鍵の使い道を知っている。

 さらに、彼女にもオトメへ行かねばならない理由がある。

 一刻も早く彼女を止めなければ。

 布団から起き上がり、視線が交差した。

 いつからそこにいたのだろうか?

 彼女はもしかしたら、もっと前に真実に気づいていたのかもしれない。


「全く、ついに失恋のショックで寝込んでいるかと思ったけど、その目を見れば、まだ折れていないようね。偉い、偉い」


 言いながら美砂さんはガラゲーを取り出して、寝起き姿の僕をカメラに残した。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 美砂さんに続いて、寝静まった街を僕たちは走っていく。

 鈴寿の行き先に美砂さんは心当たりがあるのだろうか?

 街灯と僅かな店灯りに照らされた街を迷うことなく失踪していく。


「それで、敢えて聞くけど翼ちゃんは、偽者をまだ諦めて切れていないのね」

「偽物じゃない、リンジュだ」


 間をおかずに言い返す。

 あの後、鈴寿さんと出会って、僕は確信した。


 僕が好きになったのはリンジュだ。


 鈴寿さんじゃない。

 たしかに鈴寿さんを見ていればリンジュを思い出して、とぎどましてしまうこともある。

 でも、それは僕はリンジュを思い出しているからだ。

 鈴寿さんを見ているからじゃない。

 例え、鈴寿さんの変わりに作られた存在だろうが、リンジュはリンジュなんだ。

 鈴寿さんの偽者だとしても、本物のリンジュなんだ。


「今度、リンジュの事をそんなことで呼んだら、美砂でもゆるさないからね」


 語尾を強めて言い放つ。

 美砂さんから反論の一つや二つは覚悟していたのだけど、美砂さんは走りながら語句の頭を優しく撫でてくれた。

 まるでテストで良い点を取った生徒を教師が労うかのように。


「よろしい。なら、急ぎましょう。オトメにいなけなればならないのは鈴寿だけでないのだからね」

「美砂さんが、掌を返した………」


 今度は躊躇うことなく、頭を叩かれた。


「違うわよ。前にも言ったでしょう。美砂様は優しくないの。可愛い子は崖から突き落とす主義なのよ。崖を昇ってくるまで手なんて貸さないわよ。ただ、昇りきった暁には最大限の栄位を与えるわ」


 つまり、オトメにいるときにリンジュに嫉妬心を芽生えさてて恋心を自覚させた時のように、今度は僕をどん底まで突き落として、リンジュの想いを再確認させてくれたって事なのかな?

 美砂さんは悪い人じゃないけど、優しい人じゃないことは分かっていたはずなのに、僕はそんな基本的な事すら見落とすぐらいに追い込まれていたみたいだ。


「ありがとう、美砂さん」

「お礼なんていらないわ。翼ちゃんとお姫ちゃんが幸せになってくれれば、それだけで美砂様は充分なのよ。そんなことよりも、急ぐわよ。翼ちゃんと別れた後、例の白石塔を見つけるのに苦労したのだから」


 この世界には向日葵色の石があった。

 そして、鈴寿さんとタロウは自分達の能力を使い異世界を生み出しては、旅をするかのように遊びに行っていた。

 オトメの世界で、異世界と異世界を繋ぐ渦を生み出さすには、向日葵の石と白石塔が必要だった。

 その法則は地球でも変わるはずがない。

 話を聞いていた時点で、美砂さんはその答えにたどり着いて、鈴寿さんの行動も呼んで先に白石塔を探し回ってくれていたって事か。

 美砂さん、敵に回すと面倒な人だけど、味方になってくれるとこれ以上心強い人はいないよ。


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