1-3
「まさか……異世界だとでも言うの?」
思わず、ベランダの上にお尻からへたり込んでしまった。
「どうされたのですかぁ?」
チョコレートのような甘い声に振り返ると、陶器のような白い肌を持つ美少女が微笑を浮かべながら、小首を傾げていた。
「あなた……嬉しそうだね?」
「はい。だって、ラグナロ以外で、アタシに会いに来て下さった方なんて本当に久しぶりなのですよ。もう、これを喜ばずにはいられませんよ。アタシの名前は、リンジュ・イロネと申します」
リンジュと名乗った美少女は無邪気に手を差し伸べてきた。
「僕は、代々木 翼だよ」
「よろしくお願い致します、ツバサ。これから、外のこと、沢山教えて下さいませ」
差し出された手を握手で握り返すなり、リンジュは僕に視線を合わせるようにかがみ込んだ。
ちょっと、リンジュさん、そんな風に無警戒にかがみ込まれるとスカートの下の白くてレースのついた………が。
「わあああああぁぁっぁぁ」
慌てて顔を向ける。
「え~と、本当に、どうされたのですかぁ、ツバサ? もしかし、アタシあなた様を不機嫌にさせるようなことしましたでしょうか?」
若干深刻そうに聞かれてしまった。
違うんだよ、リンジュさん。
悪いのは無防備なあなたじゃなくて、不可抗力とはいえ僕のほうなんだよ。
変態と罵られて、怒られるべきは、この僕だ。
「見てません、みせません、僕は見てません」
でも、ごめん。弁明させて。
「見てないって何がですかぁ?」
「それは、そのぅ………」
そんなの言えるわけないよっ!
何、これ、リンジュさんは僕に言わせたいの。
そう言うのが、お好みなの!?
「もうぅ、え~い」
むぎゅ。
言葉に詰まっていると、真っ正面から無警戒に抱きつかれてしまった。
ねえ、聞いた?
今、普通じゃありえない擬音が聞こえてきたよね。
「もうぅ、隠し事なんてやですよぉ」
むぎゅ。むぎゅ。むぎゅ。
マシュマロなんてもんじゃない。
とても形容なんて出来ない柔らかさが押しつけられてきて、電撃にも似た衝撃が僕の背中を突き抜けていった。
「ひゃぁふぅぅぅ」
あまりの心地よさに思わず、おかしな奇声まで出てしまった。
「ねえねえ、ツバサ、おしえてくださいませよぉぉ」
チョコレートのように甘い声色で耳元で囁かれる。
魔法に掛けてられてしまったかのようにそのお願いには嫌なんて言えるわけがなかった。
「ごめんなさい。あなたの…リンジュさんお……その、パンツを……見てしまいました」
うぁあぁっぁ、言っちゃったよ。
僕の馬鹿、変態。
何、可愛くお願いされたからって正直に暴露しちゃっているんだよ。
そんな事と言ったら、僕は変態扱いで、せっかくの彼女から嫌われてしまうじゃないか。
なんて自責に狩られていると。
「それが、何か不味いことなのですかぁ?」
怒られるどころか、何を言っているんだといわんばかりの声が返ってきた。
「へぇ?」
思わず、僕の方が目を丸くして、
「何言っているの。僕は、こんな女の子みたいななりだけど、一応は男の子なんだよ?」
自白していて、よく女の子に間違われる自分の容姿がつくづく嫌になっていくよ。
こんな惨めな思いをするぐらいなら、最初に悲鳴を上げられて、ほっぽを引っぱたかれる方が数倍マシだよ。
でも、僕が男だろうが女だろうがリンジュさんにはどうでも良かったことだって、後になって分かった。
だって、この後、リンジュさんから出てきた言葉は、僕が異世界にやってきたことよりもさらに衝撃を与えられたのだから。
「男の子って、何の事でしょうかぁ?」
「へぇ?」




