2-14
世界と世界を繋げる謎の渦。
僕は、リンジュの声に導かれその渦の中へ落ちて、この女何処だらけの世界、オトメにやってきた。
そして、今また新たな人がオトメへと迷い込んできた。
彼女の名前は、三宅美砂さん。
パーマを掛けている髪は長くて、腰まで伸びている。
染めているのか、地毛なのかその髪は僅かに赤みがかっている。
ブレザー型の制服を着ているけど、スカートは太股の半分以上が見えてしまうぐらいに短くて、胸元のボタンも上の二つが外されて首下の白い素肌がのぞき見えている。
如何にも、今時の女子高生……それもギャルよりの女子高生って雰囲気に少しばかり圧倒されてしまいそうになってしまうのは、向こうの世界で僕があんなり同級生の女の子と接してしなかったからかな。
まつげは長く、シャープな目元はこの事態を楽しんでいるかのように細められていた。
「つまり、ここは日本じゃない異世界で、しかも女の子しか存在してないアニメのような世界って事?」
僕の説明を簡単にまとめてくれた美砂さんは、贅肉がまるでなく引き締まった頬に手を当て、天井を見上げている。
「それで、美砂が元の世界に帰る方法はあるの?」
「………」
答えることが出来なかった。
隣にたっていたリンジュがドレスの裾をギュッと掴んできた。
僕はリンジュとの約束がある。僕は彼女を置いてオトメならいなくなったりしない。
大丈夫だよと教えて上げたくて、僕はリンジュの掌に僕のを重ね合わせた。
「でも、入って来れたのだから、同じ所から出ればいいのよね。この中に誰か、あの渦を生み出せる人はいないの?」
見た目はギャルぽいけど、美砂さんは頭が切れるのかもしれない。
異世界に来た異常事態なんて気にもとめず、早速元の世界へ変えるための方法にたどり着かれた。
頬に手を当てた美砂さんの視線が順に追って僕たちに向けられてくる。
「嫌だよ。ルルルはコワイから、もうあんなの作りたくないよぉ」
ルルルちゃんが、びっくと大きく肩を震わせてタロウさんの背中に隠れてしまった。
こんな小さな女の子にとって、異世界で独りぼっち、迷子になってしまうことは、心に消えることのない傷跡を残していったに違いない。
ルルルちゃんに世界と世界を繋ぐ渦を作ってなんて、酷なお願いはもう出来ないよね。
僕はポケットの中にずっと持っていた髪飾りを握り締めて、ルルルちゃんと美砂さんの間に割ってはいる。
「大丈夫だよ、ルルルちゃん。あの渦は、これを使えば僕たちでも開くことが出来るんだよ」
そう言って、向日葵の髪飾りを新たな来訪者に見せつけた。
むやみやたらにあの渦を生み出してリンジュを不安にさせたくはないけど、美砂さんだって、元の世界に帰りたいはずだ。
彼女を帰す一回ぐらいなら、きっとリンジュだって許してくれるはずだ。
「それじゃあ、美砂さん早速、あの遺跡に行って元の世界に………」
「美砂さんは別に急がないわよ。帰りたいときには、とりあえず帰るっていうのが分かれば充分よ」
帰る方法がしれて満足したのか、美砂さんはなれた動作で制服のポケットからスマートフォンを取り出した。
異世界のオトメにあるはずのない道具に、改めてこの人は僕たちと同じ世界からやってきたのだと実感してしまう。
「こんな異世界に電源なんてあるわけないから大事にしないとね。え~と、や~だ、三週間後にテストじゃないのよ。留年するわけにもいかないし、これをサボるわけにもいかないかぁ。でも、ほかには特に大事な予定は、テストの後のライブぐらいだし、しばらくはここに滞在できそうね」
さっとスートフォンをポケットにいれて美砂さんは立ち上がった。
「と言うわけで、三週間ぐらいこの世界でお世話になるから、異世界人の私をよろしくね」
まるでプリクラを取っているかのようにほっぺの横でダブルピースをしてみせる美砂さん。
その如何にも女子高生って勢いについてるメンバーは今のナロウ荘にはいなかった。
「あれ、宇宙人とのファーストインパクトは大事だから、笑顔で接してみたけど駄目かしら?」
ダブルピースをしたまま困ったように首を傾げている。
「彼女達は宇宙人じゃないデスよ。自分達と同じ人間なのデスよ」
って、タロウさんも微妙にツッコミ所が違うと思うな。
「異世界人も宇宙人も似たようなもんでしょう。未知との遭遇なんだからね」
ピースサインを鋏のようにちょきちょきとさせていたと想ったら、
「さて、そんな未知の異文化交流で、とても大事なことを聞くわ」
急にマジメな顔になって、身を乗り出しながら僕たちの顔をまじまじと見てきた。
「この世界、もちろん、お風呂あるのよね?」
………。
これぐらい神経が太ければ、美砂さんは無人島でも生きていけそうな気がするよ。




