2-13
「ねえ、タロウお姉ちゃん、ルルルお腹へちゃったよ。久々にタロウお姉ちゃんの手料理食べたいな」
「もうしょうがないのデス。今日は、特別なのデスよ。ルルルの食べたいものを何でも作ってあげるから、好きなだけ言うのデス」
「わ~~い。ありがとう、タロウお姉ちゃん。大好きだよ~~~」
僕の上から飛び降りて、タロウさんの元へ駆けていく。
早速涙が止まり、笑顔になっている辺りが如何にもルルルちゃんらしい。
本当に帰ってきてくれたんだ。
リンジュがルルルちゃんを助けるために渦の下で仰向けに倒れている僕に手を差し出してくれる。
視線を会わせるだけで笑いあいながら、リンジュの手を借りて起き上がる。
「さあ、帰ろうか、ナロウ荘へ」
「はいぃ、ツバサぁ」
でも、このとき僕らは、ルルルちゃんが帰ってきたことに安堵して、大切なことを忘れていたんだ。
世界と世界を繋ぐ白い渦がまだ閉じられていなかったんだ。
「わああああああああああぁぁっぁぁぁ」
渦の向こうから新たな声が聞こえてきた。
「はい?」
僕たちの視線が世界と世界とを繋ぐ渦のその先に向けられてしまう。
そして、この女のばかりの異世界オトメに風雲をもたらす彼女がやって来てしまったのだ。
「きゃあああああああ。いたっ」
渦から吐き出され、異世界へと迷い込んでくる形となった彼女は尻餅をつくように着地してしまった。
「いたたた。もう、一体これはなんだっていうのよ~~~」
ブレザー型の制服スカートの上からお尻をさすりながら、異世界からの来訪者である彼女は起き上がっている。
その姿を僕たちは言葉を失って、見守ることしかできなかった。
「やっぱり、興味本位で、訳の分からないものに触るもんじゃないわね」
彼女の後ろで、世界と世界とを繋げる渦が閉じていく。
それは彼女が帰る術を経たれてしまった事を意味している。
想定外の事態に僕たちは誰一人として、異世界からオトメにやって来た彼女に声を掛けることも忘れ、ただ見守る事しかできないでいた。
僕達の視線にやっと気づいたのか、彼女はこちらを順に見渡して、
「え~と、はじめまして。私は、三宅美砂よ。あなた達は誰なの?」
そして、後ろに見えるお城を指さしながら、
「それと、ここは何処なの? 本当に日本なの?」
女子高生のように可愛らしく、小首を傾げるのだった。




