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「ここが自分の始まりの場所デスよ」


 ゴスロリ姿のタロウさんに案内されたのは、お城からそれほど慣れていない場所に残された遺跡だった。

 陶器のような白い石の塔が等間隔に設置されていて、僕たちが立つ場所も円形の台座となって一段高くなっている。


「なんか、それらしい雰囲気があるね」


 市街地からもそんなに離れていないはずなのに周囲の音は聞こえなく、静粛とした空気に追わず飲み込まれてそうになってしまうよ。

 真夜中に来たら、お化けとか出てきそう。


「自分は、ここで目覚めたデス」


 ここは僕と同じ世界から来たタロウさんがオトメの世界で意識を取り戻した場所なんだ。

 僕は早速、等間隔に並べられた白い石塔に触れてみる。

 もちろん、すぐに何かが起きるわけじゃない。


「ツバサはここで何をするつもりなのデスか?」


 タロウさんが小首を傾げながら問いかけてくる。


「まさか、元の世界に帰りたいと思っているのデスか?」

「違うよ。僕はだた、友達を助け出したいだけだよ」


 振り返れば丘の上にリンジュが閉じこめられているお城が見える。


「タロウさんが、僕と同じように日本生まれだっているのなら、この世界にやって来た方法も多分一緒なんだと思うんだ。僕は、もう一度、あの渦と出会わなくちゃいけないんだ」


 僕を異世界に連れ込んできた白い渦が何であるかは分からない。

 でも、そこにリンジュと外を繋げる可能性は残されているよね。

 聞いた所によると僕がこの部屋に召還させるようになったあの白い渦は突然、リンジュの部屋に発生したようだった。

 もう一度あの白い渦を発生させたい。

 その白い渦が、リンジュを外へと連れ出す道に成ってくるかもしれないのだから。

 小さな希望を胸に抱いて足掻くけど、こんな石塔を見ても僕には何をしたらよいのか全く分からない。

 がむしゃらに触ったりしてみるけど、うんともすんとも反応がない。

 ただの石塔だったら、触るだけ無駄かもしれないけど、きっとここにあの白い渦に迫るきっかけがあるはずなんだ。


 あるって信じたいんだ。


 リンジュを外に連れ出して上げたい。

 だから、諦めたりなんて絶対にしたくないんだ。

 でも、僕は何も出来ていない。


「あああ、悔しくて頭がどうにかなっちゃいそうだよ!!」


 白い石塔に背中を預けながら空を仰ぐ。

 清々しいまでの青空がそこにはひろがっている。

 降り注ぐ太陽の陽射しは、僕のじめじめとした気持ちを浄化してくれているかのように心地よい。

 吹き抜ける風はひんやりと優しくて、熱くなった頭を冷ましてくれる。

 外の気持ちよさをリンジュにも体験して欲しい。

 そしたら、きっと彼女はとびっきりの笑顔と、とろけるような甘い声で喜んでくれるんだろう。


「だから、頑張らないといけないよね」


 へこたれるのはもう終わりだね。

 まだ、僕はリンジュに何もして上げれていないんだから。


「うん?」


 耳を澄ませばこちらに向かってくる足音が聞こえてくる。

 僕を案内してくれたタロウさんは既にナロウ荘に戻っていたけど、戻ってきたのかな?

 それとも、ここは市街地からそんなに離れていないから誰かが迷い込んできたのかな?

 音のする方に目をこらしていると、金髪を可愛い向日葵の髪留めでツインテールに編んでいる少女がやって来た。


「あれあれ、どうして、ここにツバサお姉ちゃんがいるの?」

「えっ、ルルルちゃん」


 ルルルはまるでピクニックに着ているかのような格好で不思議そうに僕を見ている。


「迷い込んできたって風じゃないよね。ルルルちゃん、もしかして、この場所知っていたの?」

「うん。だって、ここは、ルルルの秘密の遊び場所なんだからね。でも、ツバサお姉ちゃんなら大歓迎だよ」


 ルルルちゃんは白い石塔の一つに触れると呪文を刻み込むかのように手を滑らせ始めた。


「ねえ知っている? ここってすっごく面白い場所なんだよ。今から見せて上げるから少し待っていてね、ツバサお姉ちゃん」


 一つ終えると次の石塔に向かってまた指を這わせていく。

 まるで妖精のようなルルルちゃんの姿に目を離せないでいた。

 そして、同時に僕の心は期待に高まっていく。


「ルルルちゃんはいつからここを知っていたの?」

「う~ん、いつからだろうね? でも、タロウお姉ちゃんをここで見つけたのはルルルなんだよ」


 胸を張っている、ルルルちゃんを見ながら、僕は願いを込めて空を仰いだ。

 お願いだ。出てきてくれ。


「ほら、ここはおもしろいんだよ、こんな不思議なものを作ることが出来ちゃうんだからね」


 そして、空に白い渦が現れた。

 それこそが、僕をこのオトメの世界に招き込み、リンジュを詛いから解き放つ希望の存在だ。

 バラバラだったピースが繋がっていく感覚に、高揚感を抑えられない。


「ねえ、ルルルちゃん、もしかして僕がこの世界に来た日もここに遊びに来て、コレを作って遊んでいたりした?」

「うん。そーだよ」


 僕とリンジュを引き合わせる原因は、ルルルちゃんが遊び半分で作り出したものに過ぎなかったんだ。

 込み上げてくる笑いを抑えることが出来ない。

 運命じゃなく、偶然にいたずらに僕は今、こんなにも感謝している。

 ルルルちゃんのおかげで僕はリンジュと知り合うことが出来て、そして彼女を救い出す事が出来るんだから。


「ルルルちゃん、その時と同じようにもう一回呪文を書いて、この渦を作って!!」

「え~と、ツバサお姉ちゃん、何をするつもりなの?」

「大切な友達を助け出したいんだよ。だから、お願いだよ!」

「分かったよだけど、ルルルは、いつも思いつきで作っちゃっているから、上手く行くかな?」

「ルルルちゃんなら、大丈夫だよ!」


 その言葉に根拠なんて何もない。

 あるのはただ、信じている僕の気持ちだけだ。

 僕は真っ赤なドレスのスカートをはためかせながら、僕たちの始まりを作り出した場所を後にした。

 向かう先は、一つしかない。

 丘の上に見える彼女が待っている場所に向かって、全速力で駆け出した。



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