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「ツバサ~~~~!!」

「わぁわぁつ!」


 リンジュの部屋のドアを開けるなり、兎のように飛び跳ねた彼女がいきなり僕に抱きついてきた。


「ツバサァァァァ」


 情けない事に僕はリンジュを受け止めることが出来ずにそのまま倒れてしまったけど、彼女は全く気にせずに僕に抱きついてくる。


「良かったですぅ。もう、会いに来てくれないんじゃないかと不安で、不安で、たまりませんでしたぁぁ」


 もう逃がさないと体全体で表現しているかのようにぎゅっと締め付けられる。

 僕が来てくれた事でこんなに喜んでくれるのはもの凄く嬉しいのだけど………ねえ、リンジュ、ちょっと苦しいよ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 今日は趣向変えて、お茶会をせずにベランダから街を見ている。

 僕は特に喋ることはしない、それはリンジュも一緒だ。

 二人で静かに世界を眺めている。

 ただそれだけのことなのに、どうしてこんなにも心良いんだろう。


「ツバサは、アタシがこの世界に呼んでしまったこと怒っていますか?」

「そんな訳ないよ。どうして、そんな事思うの?」

「ううん、その理由は秘密ですよ」


 彼女のチョコレートみたいに甘い声が耳朶を打つたびに僕の心は満たされていく。

 リンジュはスキップを踏むかのような足取りでベランダから離れて部屋の中へと戻っていった。


「変な気分。何ででしょうね、これは。ツバサとお話ししている感じは、他の誰かとお話ししている感じと全然違います」


 胸元にそっと手を当てて、そこにある何かを愛おしそうに掴み取っている。

 ねえ、不思議だねリンジュ。

 僕も同じ気持ちだよ。

 僕も胸の前に愛おしい何かを感じているんだよ。


「ねえ、ツバサは、私のお友達になってくれますか?」


 友達。その単語に、胸がちくりと痛んだけど、僕は頷いた。


「もちろんだよ」

「本当にですか? だって、ツバサは………」


 その瞬間、雷が鳴った。


「キャッ!」


 驚いたリンジュが僕の側まで駆け寄って抱きついてきた。

 見ればさっきまでの晴天は無くなり、空はどす黒い雲に覆われている。

 ポツリと僕の額に水滴が落ちてきた。

 急いでリンジュの部屋に戻ると同時に、外は滝のような大雨になっていた。


「あ~~、残念、雷に邪魔されちゃいましたですね」


 胸元でリンジュが呟いた。

 何が邪魔されたのって尋ねようとしたけど、それよりも前に、胸元から離れたリンジュが窓を閉めに向かった。

 鍵を掛けて、カーテンを閉めて、兎のように軽やかにジャンプして僕の方に向き直ると、いたずら好きの猫のように目を細めて、こう言ってきたんだ。


「ねえ、ツバサ。この雨だと、帰るのは大変ですから、今夜はここに止まっていきませんか?」



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