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「どうしたの、ツバサお姉ちゃん。元気がないね?」


 夕食時、一言も喋らずに黙々とスープを飲んでいるとルルルちゃんが心配そうに問いかけてきた。


「元気がないのなら、自分のデザートを進呈するから元気を出すのデス」


 タロウさんがそう言って、アップルパイを僕の前に差し出してくれた。


「二人ともありがとう。でも、僕は大丈夫だから」


 みんなが僕を心配してくれれうことが嬉しくて、自然を笑うことが出来た。

 僕はリンジュをお城の外に連れ出そうとして失敗してしまった。

 その事がリンジュを傷つけたんじゃないかと不安で、自分が潰れてしまいそうだった。

 リンジュには笑っていて欲しいのに、僕はその術を知らない。


「ねえ、二人は、リンジュ姫がお城から出られないって事知っていたの?」

「うん。そのことなら国中で知らない人はいないんじゃないのかな? お城から一歩もでれないなんてお姫様可愛そうだよね。タロウお姉ちゃんもそう思うよね」

「でも、お城の中にいるのは絶対に安全デス」

「でもでも、そんなの絶対に楽しくなんかないよぉぉ」

「お姫様なんだから、守られているのが一番なんデス」


 珍しくタロウさんとルルルちゃんの意見が割れている。


「でも、それがどうしたのデスか?」


 ゴスロリ姿だけど、タロウさんはこの世界で唯一僕と同じ男の子だ。

 だから、今この苦しみを理解してくれるのはきっと彼しかいないんだと思う。


「今日初めて、その呪いを体感してきたんだけど………」


 別れ際に聞いたリンジュの全てを諦めきったかのような声を思い出すだけで胸が締め付けられて、ナイフで刺されたような痛みが心をむしばんでいく。


「その呪いから、どうにかして解放して上げることは出来ないのかな?」

「止めた方がいいデス」


 僕の仄かな願望は、間髪入れずに否定された。


「タロウさん………」

「ルルルにも言ったけど、あのお城にいる限り絶対に安全デス。敢えて、危険にさらす意味はないデス」

「それでも、リンジュは外に出たがっているんだよ!」

「出来ないことに人は憧れるデス。ただそれだけのことだデス。外に出たら、それで終わり。ただ、それだけデス」

「でも!」

「ツバサ君は、分かっているのデスか? この世界の摂理がどのようなモノか?」

「え? それってどういう意味なの?」

「分からないのなら、世界に刃向かうなんて愚かな真似はしない事デス」


 無表情に淡々言ってのけたタロウさんは、食事の途中だとと言うのにはそのまま部屋を出て行った。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 夜、眠れない僕は窓から彼女が閉じこめられているお城を見ていた。

 あの中でリンジュは今頃何をしているんだろう。

 お風呂に入っているのかな?

 もうベットに入って眠っているのかな?

 それとも僕のようにベランダからこの街を見ているのかな?

 不思議だった。

 考えるだけで心が躍っているみたいにざわついて、どんどん眠れなくなっていく。

 明日はリンジュにどんなお話を聞かせて上げようかな?

 月夜に照らされているお城を見ながら、自然とそんなことを思えた自分に気づいて、思わず噴き出しそうになる。


「なんだよ、僕。結局、明日もリンジュに会いに行くこと考えているじゃないか」


 今日、彼女を縛り付けている詛いを前にして、ボコボコに叩きのめされたというのに、僕は全く懲りていないみたいだ。

 世界に否定されようとも、タロウさんになんと言われようとも、やっぱり僕は、僕みたいだ。

 明日の彼女のことを思いながら、僕の夜はゆっくりと過ぎていく。



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