11.ミズヲ サガシマス
チュイィィィィイイイィィィイイィンッッ!!
ジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャッッ!!
時間としては深夜に入った辺りのこの時間、『Avenger-Ⅳⅸ』は勢いを衰えさせる事無く開墾を続けていた。
既に彼+αの手によって耕された耕地は150haを超えている。
イィィィィィ…………ン…………
と、その辺りで『Avenger-Ⅳⅸ』と"ANGEL DUST"は一度動きを停止させる。
その場でキョロキョロと周りを確認し始めた。どうやらエネルギー切れではないらしい。
{『農業において必要なモノは土に含まれる栄養素と水分と推測されます』 参照資料履歴 800年前──水分……水分? 周囲に水源地が確認出来ません ───水源地は確認出来ません }
なにやらAI内で一人葛藤しているようだが、その様子ははっきり言って不気味にも程がある。
周り薄暗い深夜に、白銀の装甲が星の光で輪郭だけ照らされ、しかも同じく周りに浮遊している"ANGEL DUST"までそんな様子だ。
何も知らないこの世界の人間がその姿を確認すれば、正直国軍が出陣してきてもおかしくない正体不明っぷりである。
{水源構成……───土地は十分な広さであると確認 貯め池を作り……水路を製作? }
そんな様子も、深夜だからこそ許されるものがあった。
人がいないために誰も気にしないのだ。まあ不気味さに拍車を掛けているのも深夜だからこそなのだが。
{所要時間──4時間42分18秒 水路製作素材……木材は不向きと診断されました 石・岩・砂利・セメント──……セメント 周囲に存在を確認出来ません }
作る際の時間と強度を保つための素材は確認出来たようだが、状況はまだ整っていないと言えた。
それらを集める時間も当然必要だし、所要時間で割り出された数字は集める時間は入れられていない。
しかし何気に周囲の物質から少しずつ時代のズレを確認出来てきたのか、製作に使われる素材に近代の金属等が混ざっていなかった。
拙いデチューンAIでも、その辺をようやく把握出来てきたのかもしれない。
{水路設計図 作成完了 水源地探索任務を開始致します }
水路の作成の要となる水源地をまず確認するために、移動する事にしたようだ。
展開していた"ANGEL DUST"を自身の体内に次々に収納していき、闇の中に彼は一人となった。
そして半BirdMODEから再び人型へと体の構成を変えて、開拓しなかった森の方へと歩いていった。
地味に「川」と思われる水源を熱源感知センサーで既に感知しているため、歩行に淀みは感じられなかった。
本来であれば瓦礫などに隠れて、もしくは隙間に潜り込んで生存している人間を漏れ無く「消す」為に付けられた機能だったのだが、彼の運命は現時点でとことん開発者に逆らう流れになっている様である。
{水源に至る距離 残り438m 引き続き歩行を続行致します }
歩き始めておよそ40分、『Avenger-Ⅳⅸ』は順調に水源に近づいて行った。
そのうちの30分でようやく開拓されていない森の中へと入り、川まで約450mらしい。
森と開拓地から川が都合良く近すぎないかと誤解をされるような距離だが、これの裏付けは何気に『Avenger-Ⅳⅸ』がとんでもない事をやらかしている証明でもあった。
開拓地は「一時間半前まで森林だった」土地である。
そして208cmを誇る機人の彼の一歩の距離は身長が長い分、幅広となるのだ。
更には「森がなくなった、障害物の無い直線を歩く彼が40分掛かって」森に辿り着くのである。
世界基準で考えると明らかにおかしい効率を示していた。しかも周りには木材がところどころに山積みである。
まあこれだけのモノをやらかしていても、『Avenger-Ⅳⅸ』の時代である28XX年はテラフォーミングも凄まじい技術が使われているため、そこからの応用であっという間にこの程度の開拓は可能な為、彼の基準からすれば非効率極まりないのだが。
{水源に至る距離 残り185m 引き続き───? 有機生物の複数反応……人型? サイズ・SS──子供? }
もう少しで川に辿り着くというところで、彼の熱源感知センサーは奇妙なモノを捉えた。
この深夜に、恐ろしい速度と音を出して開拓されていた森の中に子供らしき反応を多数確認したのである。
いくら人の思考を持っていないとはいえ、機械のAIでもこれは異常であると結論が出されていた。
歩行する方角を、目の前に既に見えた川から森の──山肌が晒されている方へと歩き出す。
しばらく歩くこと15分程度、彼の熱源感知センサーは反応が極近距離に居る事を捉えた。
その反応は、山肌に剥き出しにされた洞穴の入口から出ているようだ。
反応が一体何を示しているのか確認をするために、『Avenger-Ⅳⅸ』はどんどん洞穴へと近づき──
【グギャギャギャーーーーーーーーーッッ!!】
『Avenger-Ⅳⅸ』が聞いた事の無い叫び声と共に、子供のような存在が洞穴から三人飛び出してきた。
その身長は、彼が確認する限り90cm前後、三人とも全員それぞれにボロボロの剣や木で出来た棍棒を持っている。
中距離から確認される遺伝子配列からは、全く見た事が無いDNAデータが検出された。
弾き出されるAI内データ参照結果は全て『アンノウン』、人型であり子供の様な大きさではあるが人とは全く違う進化系列を歩んだ存在の様である。
まるで鷲の嘴の様な大きな鼻に、目にある水晶体の色は黄色、瞳孔は猫の様に細く、眼部は猫目石すら想像させるようである。
極め付けに、肌は全体的に緑色──病気の疾患を疑ってしまうような色合いだった。
その子供のような存在は──この世界で『ゴブリン』と呼ばれている者達である。
書き疲れた。
次の更新はいつになるかね。
閲覧数はいきなり増えてくれたが、これも昨日と今日だけだろう多分。