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10.オテツダイ シマス


適当でも短めでもとりあえず投稿すればいいかなと思い始めた。

でも基本はたぶん0時更新。


 一日も暮れ終わり、時間は過ぎて現在は夜である。

 開拓していたリリの父親達に迎賓館へと送り届けられて帰り道を遠視モードで見送った後、『シロ』はすぐに、今日リリの父親達が開拓していた森に移動していた。


{周囲確認──状態:森林 生物反応多数── }


 彼は今日一日、リリの父親達の動きを確認し続けて、それが彼らの命題であると認識した。

 『シロ』が──『Avenger-Ⅳⅸ』が、主の墓の前で誓った事、それは


私は 人を モノを 全てを 助ける事を至上と致します 


{──森林を伐採する事による住民以外の生物への影響 特大──優先度…………優先度…………}


 しかし彼が誓った内容は、全てを助ける事だった。

 文章にも含まれているとおりそれは「モノ」であっても例外から漏れない。

 樹も生きているし、それに寄り添って生きる動物達や昆虫であろうとも、彼にとっては救うモノなのである。


{……優先度 村の住民に変更 彼等の手助けに対する優先度 +150 }


 そして彼は、機械である運命の限界をまたひとつ超える。

 己の判断基準のみで、融通が利き辛いというAIの概念を覆したのだ。


『"ANGEL DUST"全機 射出準備完了 周囲展開 エネルギークール状態を維持── 発射 』


 彼は己に内蔵されている"ANGEL DUST"を装甲ラインから全て射出する。

 星の光だけしか光源が無い森に、"ANGEL DUST"が『シュシュシュシュシュ』と鋭い音を立てて『Avenger-Ⅳⅸ』の周りに展開される。

 自立制御により全機が空中で体勢を維持して周りを浮いている中で、『Avenger-Ⅳⅸ』は行動を開始した。


『任務内容 森林の開拓 田畑の基礎構築 歩道整備……──生体反応の分布図を再確認 行動を開始致します。』


 目の前にある極太の樹を彼は、腕の装甲成分を分解再構築し、手の甲に装着した高周波ブレードをひと振りした。

 その一撃だけで、極太の樹は静かに静かに断面からずれていき、倒れる前に『Avenger-Ⅳⅸ』は幹を鷲掴みにして縦に持ち上げる。

 彼の重量と木の重量が相まって、比重に対して面積が狭すぎる彼の足の裏が少し地面に食い込むが、それでも平然と動きだす。

 彼が伐採した樹の置き場と事前に定めていた場所へ持ち運び、(AIが住民への騒音問題を考慮して)静かに置いた。


 この間、僅かに15秒。しかも効率化されていない状態でこの速度だった。


 そして彼の周りに展開されていた"ANGEL DUST"が半分だけ幹の方へと飛び出し、近接武器・ファランクスリッパーであっという間に樹の枝を切り飛ばしていく。

 うち一機が、飛び散った樹の枝をスルスルと拾っていき、それを丸太となった樹のやや後方へと積み重ねた。

 それらの作業が終わらない間に、既に『Avenger-Ⅳⅸ』は次の樹を切断しており、静かに置いた後残りの"ANGEL DUST"がそれに群がる。



 短時間で周りの樹を伐採しまくり、木材の仮置き場に「丸太」と「枝」と「裁断した切り株」の山積みを作り出した『Avenger-Ⅳⅸ』は、次の思考ルーチンを"ANGEL DUST"へと飛ばす。

 "ANGEL DUST"はその命令を受け、ファランクスリッパーを自機の左右へと移動展開し、回転させながら彼の横へ一列に展開する。

 右に四機、左に四機と整列した後、『Avenger-Ⅳⅸ』自身も体の構造を中途半端なBirdMODEに変形させて体勢を低くする。

 その様子は、飛行機っぽい形状の左右と腹部的なところから手足が生えているシュールな図であった。

 "ANGEL DUST"と同じく、BirdMODEの左右に残した腕の装甲形状をまるで円型に連結したスコップの様に変形させ、高速で回転させる。


 同時に彼らは、一斉に前進を始めた。


 チュイィィィィイイイィィィイイィンッッ!!

 ジャジャジャジャジャジャジャジャジャジャッッ!!


 一列に並んだ彼等が進む毎に地面が跳ね跳び、抉られていく。

 残念ながら多大な騒音は発生してしまったが、土が飛び散ろうが地面の中にあった石が刃に引っかかろうが、そんなものなどお構いなしに、殺戮兵器は前進していく。

 そして彼等が開拓し終わった範囲まで辿り着くと、その直線からまた横に並び直し、兵装を回転させてズンズン進んで行った。

 殺戮兵器なのに殺戮しているのが地面の土というのが、今は亡きオディオの哀愁を誘うのは気のせいであると思いたい。



 『Avenger-Ⅳⅸ』はこの時、思考制御の際に項目として追加されていなかったが、地面に生えている草やら何やらも巻き込んで、もうぶっちゃけてしまうと「耕して」いた。

 植物生けしといえど、それらの助けまでは気が回らなかったようである。

 そして巻き込まれた雑草群は、地味に土の栄養として還っていく──意図していないまでも、機械らしく合理的な耕し方であった。




 一方その頃、ココリ村。

 村人達が寝静まった、星の光しか光源が無い夜に、『Avenger-Ⅳⅸ』が耕している音がやや遠目ながら村に響く。


 ───…………イィィ…………ィン──

 ……ジャ──ジャ……ジャ──……


「……んぅ?」

「……なんの音だ?」


 リリの家ではリリと父が目を覚ましたようだ。母親は寝たままである。

目を少しシパシパさせながら二人で窓枠から顔を覗かせるが、「村に異常はない」。

 暗いために目で見える範囲しか確認出来ない二人だが、音はし続けているものの、迅急な要件ではないようだ。


「……少しうるさいけど、周りも見辛いし、寝よう」

「んぅ~……おやすみ、おとうさん……」

「あぁ、おやすみ……」


 そうして再び二人は寝床に付いた。

 暗闇で見辛いとはいえ、警戒心の薄い田舎は物事に鈍感なようである。



 なお、地味にココリ村に宿泊している行商人は、元々の見聞の広さと相まって、聞き慣れない謎の音に、宿のベッドで怖々恐々としていた。

 翌日は確実に睡眠不足であろう、ある意味で初めて『Avenger-Ⅳⅸ』が人的被害を出した瞬間でもあった。

 流石の殺戮機兵である。


地味にここの表現おかしいんじゃねえの、とかの指摘を頂けると助かります。

これからあまり詳しくない機械の動作やら描写も増えてきますので。


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