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雨の日

掲載日:2005/05/08

今日、あいつを見かけた。

新しいブランド物のバッグを持って、

うれしそうに街を歩いているあいつを見た。


あの晩、見せたあいつの涙を今でも覚えている。

霧のような雨が少し強くなってきて、

二人の肩をぬらし、それでも傘もささずに立っていた。

「どっか、店に入ろう」

俺の言葉に、あいつは黙って首を振った。

そして、頬に一筋の涙。

やばいよ、俺、このままどこかに消えてしまいたいよ。

俺がいたたまれずにそわそわすると、

あいつは急に俺の身体を抱きしめてきた。

ふわっとした甘いシャンプーの匂い。

巻き毛のあいつの髪が俺の胸の上に広がる。

あいつの熱い頬を心臓の上に感じながら、

俺は思わず、あいつを抱きしめた。

ただ、ぎゅっと。

「わかってた。あなたが、そう言うの」

あいつは顔を俺の胸に埋めたまま、そっとつぶやいた。

俺のバクバクと言う心臓の音はあいつには絶対、聞こえていたと思う。

だから、あいつはあの時、顔を上げ、

俺の頬をその細い手で包み込んだ。

柔らかな手のぬくもりを感じ、俺は思わず目を閉じた。

あいつ、キスは上手かったな。

優しく俺を引き寄せると、そのふくよかな唇で俺の唇をゆっくりと吸う。

まるで、俺の心まで吸い取っていくようだった。

ああ、俺はこれに弱いんだ。

雨がしとしとと、さらに降り出した。

俺達はそのままずっと抱き合ったままだった。


あいつ、かわいかったよな。

俺はふっと口元に笑みを浮かべた。

仕事が終わって車に乗り込むと、俺はタバコを一本吸った。

いつもと同じように。

部屋には灯りがついていた。

「おかえり〜、今日、デパート行ってたの、

ねぇ、ねぇ!これ、買っちゃった、見て、見て!」

ホント、プロポーズした、あの時のお前は今よりずっとかわいかったよっ!


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