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倒産中年社長、異世界で孤児達と逆転再生経営!  作者: 神永ちろる


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屋敷へ向かう馬車

第46話 屋敷へ向かう馬車


マルペン商会の一日が終わる。


帳簿が閉じられ、倉庫の扉が下ろされ、灯りが落ちる。

その頃になると、決まって馬車が正門に横付けされる。


社長が乗り込む。


そして当然のように――

経理課長と秘書が続く。


二人とも若く、美しい。

しかも有能。

経理課長は数字の鬼。

秘書は交渉と調整の天才。

社長にとっては、どちらも不可欠な存在だった。


「また一緒か。」


「協会長の娘だからな。」


「経理は社長の懐事情全部知ってるしな。」


従業員たちは遠目にそれを見る。

馬車の扉が閉まる。

三人を乗せて屋敷へと走り去る。

社長は内心、ため息をつく。


――困った娘たちだ。


だが正直に言えば。

最近は慣れた。

二人とも可愛い。

妻には悪い。

だが俺も男だ。

帰るあてもない。


仕事だ。護衛だ。相談だ。

頭の中で言い訳を組み立てる。

馬車の中は、ただ帳簿と明日の予定の話をしているだけだ。


だが。

それを見送る側は違う。

夜の酒場。


「今日もべったりか。」


「社長もやりますなぁ。」


笑いが起きる。


「いいなぁ、あんな美人と毎晩帰れるなんてよ。」


「なぁ、屋敷で三人何してると思う?」


誰かがニヤリとする。


「それはもちろん――アレだろ。」


爆笑。

酒が進む。

笑いは大きく、だがどこか棘がある。

羨望。

妬み。

猜疑。


「慈善家だの何だの言ってよ。」


「結局は女も金も独り占めか。」


「俺らは帳簿締めて倉庫で汗かいて終わり。」


「社長は美人二人連れて帰宅。」


また笑う。

だが目は笑っていない。

その場にいる多くが、元浮浪者だ。

社長に拾われた。

救われた。

恩はある。


だが。


人は救われても、嫉妬をやめられない。


「まぁ、社長も男だ。」


「当然だよな。」


言葉は軽い。

だがそこにあるのは、尊敬ではない。


“距離”だ。


かつて同じ地面に立っていたはずの男が、今や遠い。

馬車で去る背中。


屋敷。

美人。

権力。

金。

そして慈善。


全部持っているように見える。


――俺らは何だ?


酒場の空気が少し冷える。

笑いの奥で、不満が燻る。

社長は知らない。


屋敷では、ただ帳簿と資金繰りの話が続いている。

慈善を続ければ、三ヶ月後は赤字。

寄付を募るか、融資を受けるか。

経理課長は真顔で言う。

秘書は静かに策を練る。


三人はむしろ綱渡りだ。

だが外からは見えない。

見えるのは、夜の馬車と、美しい横顔だけ。


そしてその夜、酒の席で生まれた噂は、翌朝には“事実”に変わる。


マルペン商会の中で、静かに火種になっていき燻る。

高評価ブックマークよかったら励みになりますので、よろしくお願いします。


むかし漫画を描いていたら、「無駄な努力を。」と言われた。ムッとしたが、今思えばそうだと納得できる。ただ経験を生かした小説が芽がでれば、鼻をあかせるだろう。

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