見守り我慢する社長
第43話 見守り我慢する社長
少年サッカーの強豪チームの話を、社長は昔どこかで聞いたことがあった。
その監督はこう言ったらしい。
「教えるのは簡単だ。しかし我慢して教えない」
「ゲームなんだから、自分で考えろ。」
試合が始まり、ホイッスルが鳴れば、監督にできることはほとんどない。
叫んでも歓声にかき消される。
だから任せるしかない。
怒鳴って、叱って、型にはめるのは簡単だ。
だが――
黙って見守るのは、途方もない忍耐がいる。
今、社長はまさにその気持ちだった。
工房の隅で腕を組みながら、若者たちの動きを見守る。
(あーあれじゃ駄目だ)
思わず声が出そうになる。
だが、飲み込む。
ぐっと拳を握る。
(言うな。言ったら終わりだ)
子供たちの目は、きらきらしている。
迷いながらも、自分の頭で考えている目だ。
あの目はいい。
会社を変えられる目だ。
次の時代を作る目だ。
社長は静かに視線を外す。
口を出さない。
我慢の日が続いた。
数日後。
「できました!」
試作品を抱えて、若者たちが走ってくる。
その顔はまるで、主人に褒められたい子犬のようだ。
(……可愛いな)
正直、甘い。
完成度はまだ低い。
だが、言わない。
「いいじゃないか。」
まず褒める。
「ここを直せば、もっと良くなる。」
修正点は示すが、答えは渡さない。
そして店頭へ並べた。
――売れない。
若者たちの顔が曇る。
沈黙。
その中で一人がぽつりと呟いた。
「どうしたら売れるんだ?」
社長の胸に、その言葉が深く刺さる。
(それだ)
それを言わせたかった。
失敗は必ずする。
失敗しない者などいない。
だが、諦めない者は成長する。
知識ではない。
経験だ。
身体で覚えることだ。
社長は静かに言った。
「考えろ。売れない理由を。」
若者たちは顔を上げる。
もう誰も落ち込んでいない。
目が、また光り始めている。
その目を見て、社長は思う。
(俺の役目は、教えることじゃない)
(考えさせることだ)
暖炉の火がぱちりと鳴った。
我慢は続く。
だが、その我慢こそが、未来を作る。
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子供の頃仔犬を飼ってました。(コロコロしていてなかなかかわいい犬)。夜の祭りの日に連れていったとき、買い物があったからそこら辺に紐を結んでいきました。ところが、帰って紐をほどいて帰ろうとしたら、少年集団に遮られ帰れない。仔犬の持ち主か疑われ、仕方なく写真とかを取りに行く羽目に。
しかし祭り会場には仔犬はどこにもいませんでした。




