ヤマタニの孤児院で働く女
閑話 ヤマタニの孤児院で働く女
「社長さん。また浮浪者を連れてきたのですか?」
「ああ。すまないが、後を頼んでいいか?」
「はいはい。いつものことですからね。」
呆れたようにため息をついたのは、孤児院で働く四十代の女性、クレナだった。
彼女もまた、ここに流れ着いた一人だ。
もともと働いていた店は潰れ、仕事を失った。
さらに追い打ちをかけるように、旦那にも先立たれてしまった。
生活のため、あちこちの店を回っては雇ってもらえないか頼んだ。
しかし返事はどこも同じだった。
「今は人手が足りている。」
「未亡人はちょっと……。」
断られ続け、途方に暮れていたとき、近所に住むヤマタニが声をかけてくれたのだ。
――働き口がないなら、うちで手伝わないか?
それが、この孤児院だった。
最初は驚いた。
とにかく子供が多い。
洗濯、掃除、子供達の世話。
朝から晩まで、やることが山ほどある。
だが、ヤマタニには一つの方針があった。
「自分のことは自分でやる。」
子供たちは、自分で着替え、自分で片付け、自分で掃除する。
だから忙しいことは忙しいが、思ったよりも世話に追われることはない。
料理は料理人がいるから、クレナの仕事は配膳くらいだ。
問題は――
ヤマタニが、どこからともなく孤児を拾ってくることだった。
今日のように。
連れてこられた子供を風呂に入れ、頭や体を洗い、服を着せる。
頭のシラミには、あのインチキ発明家の薬を振りかけ、そのあとドクターに健康診断をしてもらう。
それから寝床の用意。
孤児院のルールも説明しなければならない。
「あ〜もう……。」
クレナは額の汗をぬぐいながら、ため息をついた。
「ほんと、子供だらけで忙しいんだから。」
そう言いながらも、彼女の手は休まない。
目の前の小さな子供の頭を、優しくタオルで拭いてやっていた。
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新人賞向けに短編を書いていたら、もう受け付け期間過ぎていて愕然としました。全く駄目な自分です。
この話なかなか傑作。読んでくれたものも、面白いと言ってました。暫くお蔵入り。




