クレーム
第19話 クレーム
孤児院を開設したころ、思わぬクレームが入った。
他の店で盗みを働いた子がいて、孤児院の子供たちが関与しているのではないか、と疑われたのだ。
しかし調べてみると、風貌の似た別の子供だったことが判明した。
孤児院の子供たちは、質素ながらもきちんと食事を与えられ、掃除や洗濯、畑仕事などで忙しい。遠くの店に出向く暇などない。
しばらくすると、ルミナス教のシスターが視察にやってきた。
虐待がないか、孤児院の経営はどうなっているか、と細かく見て回る。
シスターは満足そうに施設を見学し、帰り際にお布施を渡した。
その後も衛兵がやってきて、子供を不当にさらったり、悪事を働いたりしていないか調べていった。
人身売買や暗躍する闇商人の存在もあるらしく、注意を促された。
さらに商人協会からは、協会長が直々に視察に訪れ、浮浪者従業員の扱いを褒めてくれた。
浮浪者はよく盗みを働くし、大人になれば悪いギャングになり得る。
商人にとって天敵だ。
しかしヤマタニは裕福ではなく、むしろ痩せ細っていた。
それでも、孤児院の子供たちにパンを分けるため、自分の食事を差し出した。
孤児院の評判は良かった。
貴族夫人たちが寄付に訪れ、近隣住民も町が清潔になり治安が改善されたことに感謝した。
ヤマタニは知っていた。落書きやゴミの放置が、どれほど犯罪を誘発するかを。
落書きされた場所では、『あいつがやるなら俺も』と真似る者が出る。ゴミも同じだ。
そのため、休みの日には孤児院の子供たちと一緒に町の清掃活動を行うことにした。
貧しい孤児が悪い子と思われないようにするためでもあった。
しかし、人さらいは依然として厄介だ。
青年に近い子供たちを警備員として活動させ、防止策を講じた。
新たに警備員を雇う余裕はまだなかった。
余計なことに気を取られる日々の中で、発明活動がおろそかになっていたが、ヤマタニは再び挑戦した。
炭に銅線を巻き、抵抗を作り、電球の試作に取り組む。
素材は竹炭や鉛筆の芯などを試した。意外にも竹炭で実験したものは、短時間ながら長持ちした。
商品化してみると、1200時間も持続する電球が完成した。
エジソンの偉大さを思いながらも、ヤマタニは新設の工場を立ち上げ、バッテリーも大型化。
専用ソケットとコードをセットにして販売した。
ランプで十分だと思っていたが、反響は凄まじく、電球は飛ぶように売れた。
工場はフル稼働し、孤児院の運営資金も確保できる。
だが、過労は容赦なく、ヤマタニはついに倒れてしまう。
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