気にしてた事
第16話 気にしてた事
仕事にばかり気を取られて、この世界のことを考えていなかった。
「自分がここに来たのだから、もしかしたら、あの発明をした人も来ているかもしれない」
ふと思った。
現代の商品を作れば、きっと向こうから訪ねてきてくれるだろう。
しかし、この世界は中世そのものだ。
治安は悪く、生活水準も低い。
「なんですか、橋を渡るたびに金を取るなんて!」
いちいち城門で税を取られるのでは、商業の発展も妨げられるだけだ。
浮浪者も多いのに、野放しにされていて対策はない。
スローライフを目指していたはずなのに、気がつけば考えているのは――
「浮浪者を全員雇って会社にしてしまうか」
そして、研究も続けよう。
この世界で、新しい未来を作るために。
最近、どこからかやって来た者が、石鹸やロウソク、動く玩具を作って成功したらしい。
「どんな男だろう?」
偏屈な中年か、知的な中年か、あるいはちょっとイカれた中年か……。
いや、会ってみないと分からない。フフフ、楽しみだ。
北地区にあるという、マルペンマークの工場に向かう。
到着してみると、子供ばかりが働いている。
何か、子供の施設かと思って見回してしまった。
しかし、工場のあたりをあちこち見ていたら、突然二人の青年に肩をつかまれ、取り押さえられてしまった。
「社長のところへ連れて行きます」
そう言われ、社長室に連れてこられる。
「私はハンフリー商会の者で、あなたに商人協会へ加入するよう勧めに来ました。けして怪しい者ではありません」
懐から紹介状を取り出し、商会の身分証明を見せる。
「ああ、そういうことでしたか」
警備員を下がらせ、お茶を出してくれた。
「商人協会ですか?こちらにメリットはあるのですか?」
「はぁ?ご存知ないのですか?協会に加入しなければやっていけませんよ?」
「そ、そうなんですか……。私はよそから来たばかりで、まだ日が浅いので分かりませんでした」
なるほど、そうでしたか。
話によると、協会は国家機関で、商人を管理するための存在らしい。
危険な品物が勝手に売り買いされないよう制御し、経済をコントロールするためにも必要なのだという。
露天商人は放置されているが、ヤマタニのような工場を持つ者は放っておけないのだ。
「後日、協会に出頭し、加入するように」と告げられる。
言うことを聞かなければ、強制排除もあるらしい。
ついに国家権力が、ヤマタニの前に姿を現したのだ。
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ヤマタニが異世界にやって来たように、自分がもし異世界へ来たらどうしようとドキドキしますね。
言葉や文字や文化が違ったら、終わったと絶望するかもしれません。
でも海外に行ったとき、カタコトな英語で何とかなりましたから、以外と適応できるかもしれません。




