詩 生贄そだて
掲載日:2026/02/19
「この村を守るために差し出そう」
「でも、今まで一緒に生きてきた者達を差し出すのはーー」
「なら、家族のいない、親のいない赤ん坊がいるじゃないか」
大切に 大切に育てる
怪我がないように 病にかからないように
飢えないように 死なないように
けれど 心までは大切にしない
それは大切にしなくていいものだから
あと何年か あとどれだけか
所詮はいなくなる 命なのだから
共には 長くは 生きていかない
自分たちとは 途中で別れる
そんな 悲運な 短命な
大切で 大切じゃない 命だから
「必要な犠牲だ、生贄だ」
「だから大切にはするけれど、本当に大切ではないから」
「大切になんかできない、しない」




