第13話
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(大海に広がる酷く赤い星年老いた老星。そして地上の芝に寝転ぶ無様な私。虫が鳴いている。二匹の野良猫がうろつきニャーと喋っている)
私・どうすればいいんですかね。
老星・どうとはどう。
私・これからどうやって生きようかと。
老星・好きに燃えろ。
私・美容院のお仕事辞めたんですよ。三ヶ月で。
老星・び、美容院。知らん。燃えろ。
私・結構接客とかも得意なことに気がついて、よく褒められたんです。
老星・接客。知らん。燃えろ。
私・他にも五つくらいアルバイトしてみたんですけど、どの場所でもこう言われるんです。明るいね。人付き合いもうまいね。仕事もできるね。
老星・じゃあなぜ辞めた? 燃えたくなったのか?
私・よく分かりません。何でも出来過ぎちゃうからかも知れません。これを自惚れというのでしょうか。きっとそうなんだと思います。ただやれることしかやってないからそう思うだけなのかもしれません。運動も勉強もそれなりにそれなりの結果を出して良くも悪くもそれなりなんです。これ以上やったらしんどいな、難しいなと感じたらすぐに逃げるんです。逃げるって良い意味ですよね? あれ違うんですか? 悪い意味なんですか? でも自分はそれで気持ちが救われてもいるんですよ。救いは悪。それとも善。
老星・たわけ。わしに肯定を求めるな。
私・そうですね。本当に。でもダメなんです。本当はそんな事が言われたいのではないのです。けど褒められたいわけでもないんです。だからって怒られたいわけでもないんです。つまらなくもないんです。ただ同じように面白くもないんです。お金も欲しいけど、この世の中に値段がなくなったら要りません。何を当たり前の事を、とお思いでしょうけど。本当は何も欲しくないのかもしれません。時々、見えませんか。小さな黒とそれ以上に大きな黒が。それを感じる時、無性にやめたくなるんです。分かってるんです。誰かのせいにしていることも。だから時々、ここに来て思うんです。地球は無になって、我々人類は大地に全てを返還するべきではないのか、と。
老星・つまらん。わしみたいに燃えんからそうなるんじゃ。ほとほとつまらん考えじゃ。
私・はぁ。本当に燃えたいですね。でも皆一斉に燃えるとかじゃないと納得できない。
老星・わしなんかずっと燃えてる。
私・そりゃ貴方は星だから。
老星・お前さんは猿じゃないのか。
私・ええ。僕は人間ですよ。
老星・人間とは人のことか。
私・ええ人です。あの人です。
老星・けっ、つまらん生きモノになりよって。星になれ、星に。
私・僕も時々そう思いますよ。どうやったら星になれますかね。
老星・へッ。知るかい。燃えろ。ただ燃えろ。
私・確かにそれはいい。燃えるだけですもんね。
老星・やってみるか。
私・無理ですね。
老星・なぜ。
私・死んでしまいます。
老星・情けないの。人じゃ。わしの知ってるろくでもない人じゃ。ペッペッ。
私・貴方は人が嫌いなんですか。
老星・ああ。嫌いじゃ。生意気にこちらを見てくる。綺麗じゃなんて、こっちは必死になって燃えてるというのに。けしからん。
私・必死になって?
老星・ああ、必死じゃ。燃えんかったら吸い込まれるからの。ま、どちみち吸い込まれるがの。
私・人だって腐りますよ。だから生きてるんですかね。
老星・知らん。人なんぞけしからん生きモノは。燃えろ。ただわしのように燃え……………………………………………………。
虫と猫二匹・…………………………。
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可笑しいな、私が懇願した? 人にしてくれと。
それでも悲しいかな。人は人として生まれてしまえば、先に生まれた人たちを敬い、感謝するべきらしい。はて、実に不思議な習わしである。強制的に命を与えられた我々は、そこにあるべき姿を見出さなくてはいけないらしい。
人とはそこまで必要なのか。別に絶滅してもよいのではないか。気づいているんだろう。我々人類は、大地の敵以外の何者でもない。それでも知らんふりか。破壊するか。我が物顔で大地を踏むか。死にたくないか。怖いか。まだ増やすか。もうやめ給え。どれだけ自分たちの良いように言ってもそれは人なる存在の悪しき癖だ。
生まれてしまったから、生きるしかない。心臓が動く限り。本当にその様なことを繰り返していくのか。今までもそうだったから当然のこと。永遠にその理に倣うだけ。生きてれば苦しい。でもきっと楽しいこともある。その苦しさは何の罪か。その楽しさは何の悦か。
もうよそう。人生は苦しい。人生は楽しい。もうよそう。
人が人である理由なんて生涯考えたって、ない。人の為の領域を出ない。大地の為に生きる人はいない。自ら望んで生まれてくる人はいない。意思などない。なのに、生まれたら生きようとする。意思を持ち始める。神を持つ者。持たない者。その果てしない、矛盾。
割り切ってしまえ! 難しく考えるな! 脳を捨てろ!
生物本能に身を任せろ! 都合の悪い事には目を瞑れ!
答えなどない!
それこそ至高の人生也!
天晴れ! 天晴れ!
万歳! 万歳!
人の生。命の大切さ。尊さ。生こそ善。死こそ悪。
ナニ、殺して、明日、ワレ、生きる?




