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第六話 決闘の結末

 しばらくーー、


「ハアハアハア……。やるな、アイン」

「くっ、ジーク。お前もな」


という悪役ごっこ……もとい、決闘を続け、ジークフリードと俺は互いに片膝をついた。

 俺が頑張ったおかげ(?)で互いに手傷はない。


「フッ……」

「フフ……」


 ジークフリードと俺は、互いに笑みを浮かべる。

 あ、これは最後の仕上げがイケるな。


「ジーク! これが最後の攻撃だ! 受けてみよ!」


 俺は立ち上がり、一際大きなオーラを出す。


「よし! 受けて立つ! こい!」


 ジークフリードも立ち上がり、『王者の剣』を正眼に構えた。

 観覧席がクライマックスを悟り、静まり返ったようだ。

 ーー俺の思惑通りなんだが……。この国、大丈夫?

 まあ、いい。あとは俺の魔剣をジークフリードが砕いて、終わりだ。剣にこっそりヒビを入れ、仕込みは万端。

 よし、茶番は終わりだ。それではーー、


 ーーん?

 ーーんんん???


「うおぉぉーッ!」


 ジークフリードが、暑苦しい叫び声を上げる。

 いや、それだけなら良い。それだけなら良いんだが!?

 ジークフリードが黄金色に輝き出した!?

 『王者の剣』から黄金色のオーラが発せられてる!?

 ーーそんな馬鹿な!? 俺が『王者の剣』を調べた時は、なんてことない普通の剣だった!

 ……てことは、ジークフリードが真なる力に目覚めたパターン!?

 なに、その主人公補正!?



 いや、なるほどーー。思えば俺も人格融合で魔力が飛躍的に増大した。うちの血筋、実は魔法使い血筋で、魔法の適性が高いのだろう。

 俺に追い込まれ、ジークフリードの真の魔力を解放させてしまったんだな。納得。

 ーーて、納得してる場合ではない! 剣に乗せた魔力や佇まいから、どうもジークフリードは剣士よりの『魔法剣士』のようだ。そんなジークフリードが繰り出す『王者の剣』の一撃は、威力が想像できない! 俺の身が心配だ! 俺の魔剣『真魔黒竜剣』は次の一撃で剣身が折れるように小細工してしまっている! 攻撃を受けれない!

 いや、なんとかするしかないーー。俺の楽しい異世界ライフのためにッ!



 俺は魔剣に魔力を注ぎ込んで強化した。これなら、一合くらいは打ち合える。ーーはずだ。

 次に、防具にも莫大な魔力を込めた。これなら、どんな攻撃も防げる。ーーたぶん。

 ええい、ままよ。


「小細工をするな! 喰らえッ!」


 俺は威勢よくーー内心ビビリながら、ジークフリードに跳躍からの上段攻撃を打ち込む。


 反撃ーー

 下段からの斬り上げーーじゃない! 

 突きーー

 しかも、防具のない鼻っ柱へーー

 ここにきて、コ◯しに来てるッ!?

 間に合わなーー

 ーー全魔力放出ッ!!



 金属と金属ーー、『王者の剣』と俺の魔剣がぶつかった。


 ギィィィン!


 全魔力を放出し、無理やり俺は魔剣の軌道を変え、『王者の剣』を受け流すことに成功!

 なんとか胸当てで済みーー胸当てが砕けた。


(……あやうく、死ぬところだった)


 俺は突きを受けた反動で地面に転がる。

 胸が痛い……。肋骨にダメージを受けている……。


「……ハアッ、ハアッ」


 ジークフリードは肩で息をつく。


「ぐっ……」


 そして、俺からの反撃に備え『王者の剣』を構えようとするが、よろけてしまう。

 急に目覚めた魔力を使いすぎ、体力的に限界なのだろう。

 ーー表情が、暑苦しい。

 イケる!

 そう判断した俺は片膝をつき、


「待った! 待ってくれ、兄上!」


 と叫んだ。

 呼びかけは、衆目の中であるため『兄上』としている。先程の一撃で魔力が尽き、胸も痛むが精神力で演技を続ける。


「どうした……」


 なんとか『王者の剣』を構えたジークフリードだったが、剣を下ろす。

 片膝をついたままの俺を見て、戦意なしと判断したようだ。


「悔しいが、兄上を認める! 俺に悔いを改める機会を作るために決闘を受けてくれ、真剣に向き合ってくれた! 俺は目が覚めた!」


 そう言って、俯く俺。


「俺の、俺の……」

「ーーわかった。お前の気持ちは、わかった! この勝負、引き分けだッ!」


 ジークフリードが俺に近づき、肩に手をかけてくる。

 やった、引き分けだ♪ 計算通り! チョロい!

 あと、一つ片付けないといけない問題がある。


「兄上! この国は頼んだ! 俺も王族に恥ずかしくないよう見聞を広め……」

「頼もしいぞ! アイン!」


 ジークフリードは俺を立たせ、俺の両肩を掴む。

 力、強いんですけど……。

 まだ余裕?


「お前が王都の学校で三年学んだ後は、副お……」


 副王!?


「兄上! 俺は今回の件で自分の未熟さを自覚した! 兄上の補佐が出来るよう、見聞を広めようと思う! 国外へ留学させてくれ!」


 俺は慌てて、ジークフリードの言葉を封じる。


「……そうか! 良く言った! ではブクマ国の学院に留学できるよう手配しよう! 留学が終わって帰国したら副お……」


 副王言うな!


「感謝するぞ、兄上! そういえば、兄上に話しておきたいことが……」


 またもやジークフリードの言葉を封じると、観覧席から俺たちに向かって駆け出してくる人影があった。


「ジーク様!」


 そして、人影はそのままジークフリードに抱き付く。


「エリー……!」


 ジークフリードは、抱き付いてきた人影、エリーゼを支える。

 この女性、エリーゼはイケヤ王国の隣国であるナビス公国の王女である。

 俺より二つ年上の彼女は清楚でゆるふわ、守ってあげたいタイプだ。瞳がキラキラで、一昔前の少女漫画に出てきそう……。

 エリーゼは、留学のためにイケヤ王国に来て、王宮でジークフリードに会い、恋に落ちた。やがて二人は、愛し合うようになる。

 なお、覚醒前の俺はそれを妬み、ちょっかいをかけていた。

 

「ジーク様……」


 エリーゼはジークフリードにすがり付き、そのまま涙を流す。


「……」


 俺は、いたたまれなくなった。

 エリーゼは、ジークフリードのことを心配したんだろう。

 俺の悪ノリが過ぎて、いらん心配をさせた。


「……エリー」


 ジークフリードは、遠慮がちにエリーゼの髪を撫でる。

 そして俺の方を、チラリと見る。

 あ、俺に気を使ってる。いたたまれない感じの俺を見て、勘違いしたのか。


「……兄上、エリーを泣かせたら承知しないぞ」


 俺は、ちょっと良い奴ぶってみた。

 少し恥ずかしいからか、毛皮を触って横を向いてしまう。


「アイン様……」


 エリーゼが、濡れた瞳を俺に向ける。


「エリー、今まで嫌な思いをさせて、悪かったな」


 俺はエリーゼに謝る。


「……いいえ。アイン様、ありがとうございます!」


 エリーゼが俺に頭を下げる。


「礼を言われるようなことはないぞ」


 とまた良い奴ぶる、俺。

 非常に、すこぶる、かなり、申し訳ないんだが……。


「アイン……。よし、俺は立派な王になるぞ。みな、力を貸してくれ!」


 ジークフリードが力強く宣言する。

 ーーいつの間にか、観覧席にいた者たちが俺たちを囲んでいる。

 全員、表情が明るい。

 なに、この大団円みたいな……。

 あー、君たち。良かったね、俺が勝たなくて。


「アイン、俺は嬉しいぞ! お前も俺を支えてくれ、副お……」


 この期に及んで、まだ副王ッッ!?


「兄上! 耳に入れておいて欲しいことがッッ!」


 俺はジークフリードの言葉を全力で遮った。

 そのはずみで、毛皮の房を少し抜いてしまったーー。

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