第四話 リミッター解除
『な!? だめだと!?』
『当たり前だ。神聖な決闘でいかさまとはなんだ!? 本気でこい!』
いや、あんた!
ーージークフリードは、そんなに剣の腕が良くない。単純な剣の勝負ならば俺が勝つ可能性が高い。
なんと融通が利かないやつだ。……まあ、俺が適当に負ければ良いか。
『俺は本気だ! 勝った方が、負けた方に命令できるんだ! 俺はお前を副王に任命する!』
ジークフリードは念話で俺に宣言した。
「なんだと!?」
俺は驚愕した。
ーー副王だと!?
思わず、声に出た。……副王ってずっと国にいて、ジークフリードの仕事の補佐か!?
そ、それは断るッ! 俺は異世界を見て回るんだーッ!
『こっ、こっ、ことッ』
『ーー鶏の真似か、アイン。余裕だな』
『違う! 断るって言いたかったんだよ!』
どもってしまった……。
つい、毛皮を荒く掴んでしまう。
ん、俺、おちょくられた??
『そうか、やる気が出てきた訳だな! 面白い、本気で勝負だ!』
叫んで(念話だけど)、斬りかかってくるジークフリード。
(話が通じない!?)
俺はジークフリードの剣撃を受け流し、距離をとる。
観覧席では、ほとんどの人が心配そうにジークフリードを見つめていた。ほとんどが、ジークフリードの味方だ。
まあ、そうだろうな。それは当然なのだが、ちょっと寂しい。俺の味方といえば、他国から流れて来て、金目当てに近付いてきた怪し気な亡命貴族や荒くれ者たちだ。
(ーーどうやって切り抜ければいいッ!?)
俺は焦った。
どう戦うか……。
ちなみに、ジークフリードの腕前はC級(一人前)くらい。俺はB級(一流)に、辛うじて届くくらい。勝つのも負けるのも、それなりの演出がいる。
勝てば、王位と相手に命令をする権利を勝ち取れるようだが、俺が勝ってジークフリードに王位を譲っても、断られるような気がする……。
あと、優位な点として剣の腕前とは別に、『アインホルン』には隠れた才能があった。
ーー魔法が好き、という才能である。
王族の英才教育の合間に、『アインホルン』は魔法の本を読んだ。寝る間を惜しみ、魔法のコソ練をした。それは、楽しかった。好きなことに好きなだけ没頭する時間は、かけがえのないもので、ひたむきだった。ーー引き籠もりの美点である。
ーーなぜ『アインホルン』が隠れて魔法を学んでいたかというと、うちの国は初代国王が『剣士』であった。王族は『剣』を修めなければならなかった。『魔法』は意識的に遠ざけられていたのだ。
『アインホルン』には『魔力不足』と『独学』という欠点があったが、もし、魔法の英才教育を受けていれば、現状は少し変わっていたのかもしれない。
あとーー、『アインホルン』の変化について付け加えておかなければならないことがある。それは、俺と人格が融合した副作用なのか、あるリミッターが解除されたことだ。
理由はわからないが、『アインホルン』は無意識のうちに魔力の出力が抑えられていた。それが解除されたため、今まで蓄えてきた魔法の知識が活かせるようになった。
なんにせよ、『アインホルン』は魔法使いの素質を開花させた。結果、魔法使い寄りの『魔法剣士』に成長を遂げている。
この力で、決闘は俺が支配できる