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第二話 決闘上等!

 ――ちなみに今の状況だが、俺の目の前に立っている黄金色の髪をした長身の男が兄で、この国――イケヤ王国の第一王子である。

 鳶色の大きな瞳が、俺を見据えてくる。

 穏やかそうなイケメンだが、眉が濃く、言わば『一昔前の男前』だ。

 ちょっと暑苦しいーー。

 長剣を油断無く構えているようだが、すぐ崩せそうな構えだ。

 俺は、焦った。

 俺はこの国の第二王子で、兄のジークフリードと王位を賭けた決闘をしている。なぜそういう状況なのか簡単に説明すると、王が後継者を決めきれず急死したためだ。

 なお、俺は日本という国に生まれたが、この世界に転生した。不幸にも、召喚魔術に引っ掛かってしまい、この国の第二王子に転生していた。それが、先ほどその記憶が甦ったという訳だ。



 闘技場には俺とジークフリードと立会人。

 観覧席には、国の首脳部や貴族、主だった騎士たちが座っている。


(……なんで今!? なんでこのタイミングで覚醒するの!?)


 人は――、

 くどいようだがーー、

 その人となりは、見てくれだけで判断できる――。

 兄は、正に正統派の王子。

 ……俺は、正に典型的な悪役。

 俺は心の準備(置かれた状況もだが、自分のコスチュームにかなりダメージを受けている)をするとともに、いかにしてこの場を切り抜けるか考えた。

 内心の不安を隠すためか、つい毛皮を触ってしまう。肌触りは良い。俺は毛皮の肌触りを確かめつつ、記憶の摺り合わせを行っていたーー。


◇◆◇


 この世界は【セツカ】と呼ばれる、剣と魔法が横行する危険な世界だ。

 今は神授暦一〇一五年。

 俺はナロー大陸の中心に位置する、イケヤ王国の第二王子として生を受けた。もう、15年も前のことである。

 このナロー大陸は、国同士が外交を必要最低限に行い、諍いを避けて平和を保っていた。イケヤ王国は大陸の中でもそれなりの大国で、穏やかな王が国を治め、国は繁栄を享受していた。



 そのイケヤ王には、


 第一王子、ジークフリード

 第二王子、アインホルン(俺)


という二人の王子がいた。

 通常であれば、ジークフリードの方が王に相応しい。が、彼は庶子であった。

 王は、後継者選定に慎重さを見せた。

 


 二人の王子は、長じるに従って性情が明らかとなる。

 ーージークフリードは品行方正、温厚な性質で、文武に秀でており良王となる素質が認められていた。

 一方で、俺は陰湿かつ残忍。激情型で、一度頭に血が上ると収まりがつかない。

 ジークフリードを次代の王にーー、という声が高まるのは必然だった。



 結果、俺は捻くれる。なにしろ、ジークフリードの、

 穏やかさが眩しかったーー

 真面目さが暑苦しかったーー

 ひたむきさが羨ましかったーー

 真っ直ぐな目が欲しかったーー



 ……やがて、ジークフリードが憎くなった。



 ーー王は後継者を決めきれなかったが、この国の法律では、長子であるジークフリードが王位を継ぐことになっていた。

 納得しない俺は超法規的措置をとった。

 それが、今回の決闘だ。

 現代にはそぐわないが、イケヤ国の創成期では王位を巡り対立があると、決闘をしていたという慣習があった。


(ーーあほか! そんな数百年前の慣習を持ち出すな!)


 と俺は叫びたくなるが、ジークフリードがこれを了承したーー。

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