第一話 闘技場の悪役王子
ーー覚醒したとき、そこは闘技場であった。
俺は、紫紺色の瞳を細め、対峙している相手を睨む。
「フフフーー」
俺の口許には、酷薄そうな笑みが浮かぶ。
濃い青色の髪を左手でかきあげ、右手に持った長剣はダラリと下げたまま、ろくに構えも取っていない。俺は、顔だけは良いのでそんな構えでも様にはなっている。
自然な感じを装って自分の身体を確認すると、魔力を帯びた鎧に包まれており、その鎧がトゲトゲで装飾されているのがわかった。
さらには、高価で希少な毛皮を巻き付けているため、見てくれは少し悪かった。なんとなく触れると、手触りは気持ちいい。
……いや、手触りなどは、どうでも良い。
……この際、はっきり言おう。
(……装備の趣味が最悪だーッ! 典型的な悪役そのものだーッッ!)
俺は心の中で絶叫する。
ーー人は、その人柄を見てくれだけで判断できる。
今の俺って、コッテコテの悪役だ。
ーーとりあえず、この状況を受け入れ、修正を図るしかない。
……などと俺が心の準備とかをしてる時、
「はじめッッ!」
と立会人が野太く言い放つ。
決闘開始の合図だ。
(まだ心の準備がーッ!? 待ってくれーッ!)
俺は、再度心の中で絶叫したーー。