第二話 共同生活
ぬか床の妖精をぬか漬けの壺に入れたまま、住んでいる築20年の実家に運んだ。
実家は両親が買った一軒家で、両親が海外で仕事をしているから1人で広々使っている。
〈ガチャ〉
〈パカッ〉
「ぬか床の妖精さん、家に到着したので出てきていいですよ······」
「〈ピョコ〉おぅ」
·····出方可愛い。
「お前疲れた表情しているな。まだ19歳で若いのにだらしないぞ。お前の先祖はこれより重いものを運んだ後も元気だったぞ。」
「まずは、ここまで運んで来たことに感謝してくださいよ。あと『若いから』は、エイジハラスメントですよ。そのひと言は人によっては、訴訟するレベルです。」
「まずはありがとう。エイジハラスメント?何わけわからないことをいっているんだ。嘘をつくな」
「〈スッ〉これ見てください。」
「何これ?」
「グー●ルアプリで調べたエイジハラスメントについてです。」
「どれどれ····今は、こんなことで訴える時代なんだな。現代人はストレスでハゲそう、辛そう、可哀想。」
「ラッパーみたいですね。でも、150年前よりも今は便利になって暮らしやすいですよ。」
「まぁそうだな。」
夕方。
·······夕食作ろう。
そういえばぬか床の妖精は何を食べるのか聞いていなかったな。聞くか。
「ぬか床の妖精さんは、何を食べるんですか?」
「私は元々ぬか床だから、ぬか床を一日一回混ぜて欲しい。あと『ぬか床の妖精さん』という呼び方は長いから、『ぬかさん』でいい。」
「わかったよ『ぬかさん』、俺のことは岩鬼って呼んでくたさい。」
「おう、わかった。」
呼び方を変えて、少し仲良くなれたような気がした。
その後、グー●ルでぬか床の世話のしかたを検索して、ゴム手袋をして混ぜていいと書いてあったので、まずは手を洗い、ぬかさんをいったん移し替えるためのタッパーを洗い、キッチンペーパーで拭く。
色々触ったのでまた手を洗う。
終わったら、ゴム手袋をしてぬかさんを壺から洗ったタッパーに移し替える。
次に壺の中のぬか床を空気を含ませて混ぜる。
最後にぬかさんを壺に戻して、使ったゴム手袋はゴミ箱に捨てたら終わり。
·······初めてぬか床を混ぜてみて面倒くさいな。
「はぁ····」
「どうした岩鬼?」
「ぬか床の世話が面倒くさいなって思って。ぬかさんって宙に浮けない?」
「50センチくらいなら宙に浮いて移動できるぞ。」
······マジか。
次からは宙に浮いてもらって、ぬか床を混ぜている間は待ってもらおう。
「じゃあ、次から浮いててください。」
「わかった。あとぬか床の世話ありがとう。」
「どういたしまして」
······これなら毎日続けても別にいいかな。
ふぅ一仕事して疲れたし、今日は軽めの夕食にしよう。
その後冷蔵庫にあった中華麺、豚肉、キャベツ、人参で焼きそばを作ってペロッと食べた。
数時間後。
「ふぅぁ〜」
······寝る前にぬかさんに挨拶に行くか。
「ぬかさんどうも。」
「岩鬼。私はもう寝るから乾燥しないように蓋を閉めてくれ。あと朝に蓋を開けるときは開ける前に2回ノックしてくれるとありがたい。」
「わかりました。おやすみなさい〈ぱこっ〉」
〈ガチャ〉
〈バフッ〉
「··············zzz」