人の話はちゃんと聞きましょう
「お食事ですか?」
「はい、旅行とか行くと、やっぱり気になるのが食事じゃないですか」
「旅行ではないですよ!あなたの第二の人生ですよ!真面目に考えてください!遊びではないのですよ!」
いや、そこにそんなツッコまなくてもいいし、話の流れ的に例えだと分かるでしょ…絡みにくいなこの人と思っていると異世界の食事事情を教えてくれた。
「現代日本人からしたら間違いなく物足りなさはあると思いますよ。お腹を壊すなど、体調面についてはこちらで調整出来るので問題はないかと」
やはりか!文明が低いということは料理の方法も最悪、切って焼く、それだけの可能性もあるのではと思ったのである。また香辛料などは高級品というのはテンプレ。基本の味付けは塩のみ…絶対そういう事だろ!
「香辛料などは高級品で基本は塩のみの味付けです。パンは固く黒パンと呼ばれるものになります。米や味噌、醤油など日本人が好きな調味料はあることにはあるのですが、ごく一部の部族が使っているくらいですし、今の日本のように品種改良を重ねた物でもないので味は格段に落ちます。」
思いついた事がほとんど当たって膝から崩れ落ちる男。しかし、すぐにこれらを解決するスキルに思い当たった。
「ネットスーパーってスキルに出来ますか?」
これまたテンプレである。がしかし、商品を買い付け異世界に現代の商品を売りつける商人ルート、レベルアップによる恩恵でどんどんと現代の武器が手に入る無双ルート、甘味やら現代フッション、更にはコスメなど女子受け抜群のハーレムルートなど正に王道のスキルである。
「ネットスーパー…今更感があるし少し弱いのでは?」
何が?と思い、無駄にドヤ顔しているその頬にビンタの一発かましてやろうかなと思っていると
「神はですね、刺激を求めているのですよ!例えば知識無双!あなたの持ち込んだ現代知識によって文明が栄え!地上には魔導列車が走り、空には飛空艇が飛ぶ!あるいは、王道の勇者ストーリー、突如生まれた魔王に立ち向かうべく仲間を集め、時には挫折をしたり、困難な道のりを乗り越え仲間とともに成長をしたり、悲しい死に別れもあれば、素敵な出会いもある。いや!逆に闇堕展開も熱いのでは!すべてを憎みすべてを焼き付くす!しかしそれを命を掛けて止めてくれたのは唯一無二の友!後悔と共に溢れる涙に誓うは打倒魔王!俺を!世界をこんなにしたり魔王に復讐を誓う!とかね!」
んー、薄々感づいてはいたが、このハゲは俺の事より神の事を考えてる。今もなお、鼻息を荒げ熱弁を奮っているがシカトである。むしろビンタしたい。なんかちょくちょくタメ口になってきてるし。一発カマしてやろうかな?
「すいませんが!ネットスーパーでいきます!食事といいますか、生活レベルを下げるのは本当にキツいです!」
声をやや張り上げて話しを遮るように主張すると
「んー、そうですか…わかりました。少しこちらで調整しても構いませんか?ネットスーパーの基本な機能は絶対つけますので。」
「はい、それでお願いします。絶対に買い物機能は付けてくださいよ!あと、向こうに行っても俺はそんなに戦おうとは思ってないので、戦闘は期待しないでください!」
ちゃんと話を聞いているのか、聞いてないのか分からない謎の間をおいてニヤっと笑いながら握手を求めてきたので、とりあえずビンタをカマしておいた。