ノリと勢いと記憶喪失
何がなんだかわからない…。ここはどこだ??
「あのー、こんばんはー、混乱してるとこすいませんが。」
話し掛けてきたのは、やや背丈と腰の低いメガネを掛けたバーコード頭のおじさんである。
「今よろしいでしょうか?」
緊張しているのか、やたら汗をかき、それをハンカチで拭う姿は哀愁が漂っている。
「…はい。というか、ここはどこですか?すいませんが、何もわからなくて…、あれ?…!?…俺は誰だ?何してたんだっけ?…は?どういう状況だこれ??」
男の混乱がますます進み、あたふたし始めると
「喝っ!!!」
っと、バーコード頭のおじさんが凄まじい声を出してきた。その声の大きさに、男はビクッと身震いをし、キョトンとなる。
「あっ、申し訳ないです。あまり思い出さないほうがいいですよ。今から説明致しますので」
「はぁ…よろしくお願いします」
完全に蹴落とされが、キョトンとなり呆然と立ち尽くすしかなく、しばらくおじさんと目が合っていると、また、大量の汗をかき始めあたふたし始めるおじさんを見てると、段々と気持ちが落ち着いてきた。
「これから説明を致しますが、1つだけ約束と言いますか、お守りして頂く事があります。」
「はぁ…」
「それは、思い出さないことです」
「はぁ…」
「はい、それでは…。単刀直入に言いますと、あなたは死にました」
「はぁ…」
何言ってんだこのおっさん?いや、本当に。真顔でよく言えるな。ちょっと失礼というか…なんか怖くなってきたな。適当に相手してさっさと帰ろう。うん、よし!そうしよう!
いや、待て!?…帰るってどこに??そもそもここはどこなんだ??ここに来るまえは何をして「喝!!!!!」ビクッ!!
「あっ、すいません。今思い出そうとしてましたよね??」
「はい…すいません…」
いや、マジでビックリした。なんか怖えんだけどこのおじさん…
「人の死とは想像を絶するものがありまして、それを思い出すと精神が耐えきれませんので、とても危険なのです。なので思い出さないで頂きたいのです。」とキリッとした顔で近づいてくるおじさん。
「わかりましたから…少し近いです!」
「あっ、申し訳ないです!すいません!すいません!」
また、汗をかき始めながら、やたらペコペコするおじさん。全然、おじさんとの距離感を掴めないが、悪い人ではなさそうだと感じる。
「では、話を進めたいとおもいます。」
おじさんの話を纏めるとこうだ。
1 私は死んだ
2 死んだ時の事は思い出さないこと(思い出すと精神が受け止めきれずにまた死ねるらしい。まぁ、よっぽどの事がない限り思い出すこともないらしいが。)
3 これから異世界に転移、もしくは転生をする
4 その異世界には魔法があり、魔物も存在し、独自の発展を遂げている
5 私が選ばれたのには特別な理由はなく、抽選的な事らしい
6 転移と転生では私につく特典が異なるらしい
7 異世界に行っても特になにかをお願いすることもないらしい。
「あの、すいませんが、なんの為の転生なのでしょうか??」
「いや、はい…実は…」
なぜか今日一番の汗をかき始め、オドオドし始めるおじさん。
「気まぐれと言いますか…実験と言いますか…」
「気まぐれ?実験?えっ?なんの実験?誰の?誰の気まぐれで飛ばされるのですか?」
「神です」
「髪?」
思わずおじさんのバーコード頭に目線がいく。
「神!!!です!!」
喝っ!!!ばりの大声を出すおじさん。ビクッとなり「すいません」と平謝りをする男
「神からの天啓です。はじめて直接天啓を受けたので、私、じつはこう見えてもかなり張り切っております」
フンス!と鼻息の荒くなるおじさん
「わかりましたので、話を戻しましょう。何の為の転生なのでしょうか?」
「あっ、はい。実は神が…なろう系と言いますか、異世界転生系の書物にハマりまして。神を喜ばせた褒美と言いますか、『面白そうだから一度試してみるか?』と言い出しまして。それで実現したのが今回の企画でございます。」
企画と言っちゃったよこのおじさん…このおじさんの中間管理職感いい、神の世界は日本の会社みたいなとこなのだろうか?
まぁ、相手は神様なわけで誰が逆らえると言うのだろうか?言った言葉は全部叶えるのだろう。
「流れはなんとなくわかったんですけど、ちょっとコンセプトと言いますか、目的がいまいちわからなくてですね…」
「あぁ、なるほど。強いて言えば、あなたを異世界に送り届けて見守ることがコンセプトですね。」
「本当にそれだけですか?」
「はい、それだけです。元々、神は人々に過度な干渉はしませんので」
確かに、前の人生において神に会ったとか神の声を聞いたとかないしな、そんな事言ったら変人扱い決まってるし。…!?あれ!?今、前の人生の事思い出してだけど「喝つ!」が飛んでこない…
「すいません、今ですね、少し前の人生のこと思い出してたのですが…」
「あぁ、すいません、説明不足でしたね。具体的に言うと、死んだ時以外の事は大丈夫なのです。あとは、名前ですね。名前も思い出すと都合が悪いです」
「名前ですか?」
「はい、名前を覚えてると、んー、なんといいますか…そうですねー、…二重人格になるといいますか。転移後の魂と精神に異常が出ると思われるので、危険なのですよ」
んー確か、初めての企画とか言ってたし、不安材料は取り除きたいってことなのかな?
「なんとなくわかりました。」
「一応ですね、神の方から名前と死んだ時の体験は思い出せないように記憶を封印されてるので、思い出すのは不可能だと考えてください」
「えっ!?じゃあ、あの『喝つつつ!!!、』は何だったの??」
「勢いといいますか、ノリ…といいますか。まぁ、念の為の処置ですね。ゲフンっ!ゲフンっ!」
コテコテの誤魔化しの咳払いをするおじさん。いや、あれ結構ビックリしたんだが…ようし!段々とイラっとしてきたぞ!
好きが講じて書くことにしました。ヨシヒコといいます。処女作になります。小説もラノベと呼ばれるものしか読んだことがないですが、本当に勢いで書いてます。誤字脱字だったり表現のわかり難いことあると思いますが気楽に読んでくれると嬉しいです。