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推しに恋をしたって無駄なのに???

お読みくださりありがとうございます!ご感想、評価めちゃくちゃ嬉しいです!


 ()()()()()()()は、王子との婚約を喜ぶ女の子じゃなかった。


 活発で勇敢な自分を守ってくれるナイトを夢見る少女だった。だから、やせ細った病弱王子と婚約者となり不人気者を押し付けられたと子供心に思ったのだ。


『嫌よ! こんなハズレと婚約したくない』


 初対面でエドワルドを拒絶したのだ。

 それから二人は拒絶し合っていたのだが、学園卒業する前、久しぶりにエドと再会した。

 頭脳明晰で見目麗しく成長をしたエドを見て、魅了されたのだ。

 一度も想いを交わし合ったことはないのに婚約者は自分だと驕っていた。

 婚約破棄されて当然なのに憤り、エドとオーガスティンの恋の邪魔をする。


 嫉妬だらけのソフィア。

 エドワルドに失恋しても諦められない。


 ()()()()()()と今の自分はそっくりだ。




 自分の心なんてどうしてすぐに分かるのだろう。……いえ、分かりたくないと抑えていたのかもしれない。


 報われない気持ちを知り、とにかく誰もいないところに行きたかった。

 焼却炉の裏なんかに隠れてレディがみっともない。


 まだ傍にいてくれるオーガスティンに、つい自嘲じみたことを言ってしまう。


「……自己嫌悪ですの。いつの間にか欲深くなってしまったのです。性格の悪さは変えられないようですね」


 このままでいいんじゃない。

 二人がくっつかないように邪魔すればいいじゃない。

 と悪魔の声がささやく。


「もう、いきますわ。コートありがとうございます」


 立ち上がって肩にかけてもらっていたコートを脱いで、彼に渡した。下げていた顔を上げて彼を見る。


 端正で雄々しい顔立ち、外側だけじゃなく中身だって格好いい。

 やっぱり素敵だと思った時、突然、涙が出て来た。


「────っ、ふ、……ぅ?」

「えっ!?」


 一度溢れた涙は抑えが効かずボロボロと出て来た。突然泣き出すなど迷惑行為もいいところだ。


「し、……失礼、しまじ、だっ」

「お、おい!?」

 

 その場から離れようとした時、オーガスティンに右腕を掴まれた。



 同時に────あぁ、この人は何故か私のいる場所が分かるのだろうか。


「ソフィア! ここにいたの!?」

 私を探してここまで来たのか、少し額に汗を浮かばせているエド。

 彼が私の左手をぎゅっと力を込めた。オーガスティンを睨み、そして私を見てぎょっとする。


「え? ソフィア、どうしたの? 君が泣くなんて……コイツに何かされたのかい?」


 涙をハンカチで拭いてくれるが、エドを見るとさらに涙が零れて来た。


「ずず……ず、いいえ。オーガスティン様は私を心配してくれて、相談に乗って下さっただけですわ。……涙は気圧のせいです」


「本当なの? なら、後は私が聞くよ」


「大した話でもないのです」


 心配してくれるエドの気持ちは有難いが、今の自分をとても言える気がしない。

 目元をハンカチで押さえて涙を拭った後、オーガスティンにお礼を言い、自分たちは祭に戻ろうとエドに声をかける。


「性格悪くたっていいんじゃないか?」


 オーガスティンは、返した上着を羽織りながらそう言った。さり気ない言葉は、今の自分には救いの一言のように感じる。


「……ありがとうございます」


 彼はニヒルな笑みを浮かべ、去っていった。

 逞しい背中を見守っていると、エドが私の顔を掴んで横を向かせた。

 そこには、子供のように頬を膨らませたエド。


 どうしたのだろうか、超美形がそんな顔したら可愛いだけなんだけど。


「ソフィア、抱かせて」


「はぁ…………えぇ!?」


 エドが両手を広げた。まさかではなく、この胸の中に入って来いと言っている。迷っていると「早く」と急かされる。

 子供の頃から友達感覚が抜けないのか、彼は未だに私との距離が近い。だけど、強請れることは初めてだった。


「あっ、そうですわ! 表の模擬店のジェラートが食べたいです。ご一緒に回りま……っ」


 掴まれていた腕を引っ張られて彼に抱きしめられた。

 突然の彼の体温に目を白黒させてしまう。鍛えられた身体は私よりも全然大きくてずっと逞しい。


「っ、……エド様っ」


 咄嗟に逃げようと腰を引いた。でも腰を掴まれて思うように動かない。


「君は私の婚約者だ」

「っ!」


 身体の隙間を埋めるように抱きしめられた。自分の鼓動が大きく鳴る。

 嬉しさよりも焦りの方が強くて身じろぎすると、彼の抱きしめる手の力が強まる。


「あ……あの」


「まだ、駄目」

「っ」


 指一本動かすのも緊張して固まる。


 どれくらいそうしていたのだろうか。彼は私の腰を支えながら、ゆっくり身体を離してくれた。


 そこにはいつも通りの優しい微笑みのエド。


「今度から、相談は私にして?」


「いえ、本当に大した話ではなかったのです」


「いいんだ。君のことならどんな些細なことでも知りたいから」


 そう言うとエドは上着を脱いで私の肩にかけた。


「肌寒くなって来たよね。私の上着を羽織っておこうね」


「え、いえ。エド様はこれから壇上に立って閉会の挨拶がありますので、お借りする訳には」


 羽織ってくれた上着を脱いで返すと、エドが「へぇ」と低い声を出した。

 金髪が私の目の前、それから鎖骨下に温かい感触。


 ちゅう。


 驚きすぎて頭で理解が追い付かないで固まっていると、エドがそこから唇を離して上着を私に着せた。

 肌に赤い……マーク。


「恥ずかしいから隠しておこうね」

「……」

「あれ? ソフィア? 固まっちゃったのかな。ふふ、私が支えてあげるから、ゆっくり祭に戻ろうか」



 呆然としていると、彼がしっかりと私の腰と手を支えてグラウンドに戻った。


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