キャロル休止
「大丈夫?」
画面の前で苦笑いしながら声をかける。
「涙出た」
「あはは。平気な顔して近付いて行くから、アレは大丈夫なんだと思ったよ」
「アレ、大丈夫じゃない」
「泣いちゃうくらいだからね」
「泣いてない。涙出ただけ」
「あはは。そういうことにしておくよ」
「コウ絶対わかってない!」
「わかってるよ。泣いてないんでしょ?」
からかうのも面白いけど、あまりやると機嫌を取るのに数日かかる。そのことを夏休みの間に学習していたのでこれ以上つつくのはやめておいた。
「わかればいい」
「さて、目当ての物も買えたし、明日も学校があるから僕は落ちるよ」
「コウ」
「ん?どうかした?」
「私、しばらく接続できない」
「あ、そうなんだ」
「ごめん。遊べない」
「気にしないで。じゃあ、僕はしばらく魔法使いでログインしてるから、ログインできるようになったら呼び出してね」
「わかった。コウ、ありがとう」
「あはは。どういたしまして」
「コウ。おやすみ」
「うん。おやすみキャロル。またね」
文字が表示されたのを確認し、「アース」からログアウトする。
「キャロルはしばらく接続できないのか・・・。」
僕は布団に入ってから意識が落ちるまで、顔も見たことがないキャロルのことばかり考えていた。