敵襲来
周囲に気を配りながらゆっくりと進んでいく。もう別のモンスターの縄張りに入っている。姿は見えないが見られているのだろう。隙を見せたらやられてしまいそうだ。
「出てこないね」
「見られてる」
「それはなんとなくわかるけど……」
「気抜かない」
「はいはい。わかったよ」
僕は苦笑いしながらいつ飛びかかられてもいいように武器を構える。すぐ飛びかかってこないことから、CPUのモンスターではなくMPであるらしい。
一定レベルを超えると警戒音はならなくなるので判断が難しい。
「厄介だな」
「うん」
「かと言って逃げれそうにもないしね」
「囲まれてる」
「勝てるかな?」
「相手次第」
「それもそうだね」
何の動きも見せないことに早々に痺れを切らしたのか、少しずつ包囲網を狭めてきた。
ゲームなので気配を探ったりはできないが、その代わりに周囲の敵を表示してくれるマップがある。そのマップの索敵範囲は意外と広かったりする。
「ゴーレムか」
敵がある程度近づいてきたことによりその姿が見えた。ゴーレムは防御力と攻撃力は高いが他が決定的に低いモンスターだ。
「ボス」
「あの奥にいるやつ?」
「遅い抜ける。追いつかれない」
「わかった。一気に切り抜けよう」
そう言うとすぐに駆けだした。
目の前には2体のゴーレム。繰り出された攻撃を回避して左右から一気に駆け抜けた。
ボス。つまりプレイヤー同士で2対1の状況になる。
キャロルが補助魔法で敵の防御を下げる。僕は一気に懐に潜り込み武器を振るった。
ゴーレムは対物理・対近接能力は高いはずなのだが、僕の放った一撃でケリがついてしまった。
「雑魚」
「うわぁ……。はっきり言ったね……」
「事実」
「いや、僕も少しは思ったけど……」
「不満?」
「まあいいか」
キャロルが毒舌なのはいつものことなので深くは気にしないことにする。
レベルが低かったのか、あっけない程モンスターはすぐに倒れた。プレイヤーキャラが倒れたことで、取り巻きであるNPCのモンスターは散開してしまった。
「あれ?また来てる?」
「北・東」
マップを見ると索敵範囲の境界線付近にモンスターの群れが表示されていた。それもキャロルの言うとおり北と東だ。
「めんどう」
「一番近い村はどっちだっけ?」
「南」
「戦闘になる前に逃げる?」
「うん」
僕らは村に向かって走り出した。
マップに見えた限りでかなりの数が確認できた。体力は減っていないが精神的にあれと戦う気力が残っていない。
「追ってきてる」
「みたいだね」
「罠」
マップを見ると進行方向に、先ほどの2倍近い数の敵が待ち受けていた。お互いに足を止める。
「すごい数だね……」
「ウルフ」
「よくわかるね」
「集めやすい」
「なるほど……」
ウルフはプレイヤーが選択できるモンスターの中では、個体能力は下から数えた方が早いモンスターだ。
しかし、その代わりにNPCモンスターの統率能力と群れ形成スキルがとても高いため玄人に好まれている。
北と東は一定の距離で動きを止めたが、南の群れはこちらに向かって進軍しだした。
「どうしようか」
「村まで走る」
「戦わないの?」
「敵多い。勝ち目薄い」
「逃げきるのも大変だと思うけど……」
「補助魔法。回復アイテム連打」
「あはは。力技だね」
「不満?」
「ううん。それで行こう」
「わかった」
そう言うと防御力を一定時間上げる魔法をかけてくれた。僕はその間に防御力重視の装備に換えておく。
準備が終わると同時に先頭集団が視界に入った。それはキャロルが予想した通りウルフの集団だった。
「行くよ。準備はいい?」
「いつでも」
「GO!!」
そうして僕らは敵の群れに飛び込んだ。
タイトルの入れ忘れで一回全滅・・・。
心が折れるところでした・・・。