一つ目の試練 (9)
ここ数日は廃人になっていたので更新が遅くなりました。申し訳ないです……。
正面から火球3つ、それに火球を隠れ蓑のに右からの突進。
『横軸での回避は突進が避けられないっ!』
瞬時にそう判断すると、火球に向かって飛び込んでいく。
1つ目を腰を沈めることで回避する。そこへ合わせるかのように2つ目の火球が飛んで来ている。それは体を少し捻ることでなんとか避ける。
無茶な避け方をした為に体勢が崩れる。そこへ最後の火球が飛んで来た。顔面直撃コースのそれを、体を丸めるように前転する形で避けることができた。
「まだあいつが来てないっ……!」
僕は前転の勢いを殺さず、そのまま立ち上がって前方に向かって跳ぶ。そこへ、すぐ後ろを掠めるように巨体が通り過ぎた。
一瞬でも迷っていたら当たってしまっていただろう。
ミノタウロスが体勢を整える前に反対側の出口へとたどり着いた。この空間だけで何回死ぬと思ったかわからない。
ミノタウロスへと目を向ける。ミノタウロスはちょうどこちらへ向き直ったところだった。
――――そんな確認などせず、即座に逃げておくべきだった。
「……か、火球が来るので可及的速やかに逃げましょう。なんて……」
親父ギャグを言ってしまうほど動揺する。
そこには、思わず見入ってしまうほどの大量の火球が、ミノタウロスを中心に数十、数百と浮いていた。
世界が止まったのではないかと思うような沈黙が降りる。
実際には1秒にも満たない時間だったのだろうが、僕にはその静寂が数時間にも感じられた。
静寂を打ち破るように、ミノタウロスが咆哮する。
それに示し合わせるかのよう、大量の火球がこちらに向かって飛んできた。
「うわああああああああ!!」
絶叫すると通路に向かって駆け込んでいく。
どんな罠があるかわからないが、足元を確認しながら慎重に進んでいられるような状況ではなかった。
正直、後ろを確認する余裕もない。
逃げながら、ふと思い出したことがある。
「ミノタウロスが出てくるのって確か」
そこまで考えたところで、目の前にT字路が現れた。
正面の壁には何か紙のようなものが張り付いている。また何かの暗号だろうかとそれを調べてみる。
それは暗号ではなく、どうやらこの先にある広大な地下迷宮の地図だった。
確認しようと地図を広げたところで、背中に嫌な気配がした為に左側へ全力で跳ぶ。悪寒は正しかったようで、先ほどまで僕がいた場所にミノタウロスが突っ込んきた。
爆発でもしたかのような轟音と共に、周囲には砂埃が舞う。
何が来たかなど確認するまでもない。
走り出しながら地図を確認する。地図の出口から逆に辿って行く。
結論として、幅が3mもないこの通路で、ミノタウロスと交差する必要があるということだった。