一つ目の試練 (7)
「――――つまり、時計で言うなら3時と4時の2択に絞られる訳です」
落石から逃げてしばらく進んだところで、前回と同様に正解の道を選べたらしく、またアース君の解説を受けていた。
「最後にこの2択を見分ける方法として、12に分割されているというのが重要になってきます。
12というのは、先ほどあげたように時計もありますが、それではこの道に辿りつけません」
僕はアース君が姿を現わしてから、当たらないと分かっているが、打撃・魔法を問わず、攻撃を繰り出し続けている。とにかく顔が腹立たしいのだから仕方がない。
「ここではこの12という数字を、更に季節・月になぞらえて考えます。そしてそうした場合、龍の該当するのは春。
数字で表すと1~3。つまり正解の道は1~3の範囲に当てはまり、なおかつ干支が当てはまる3番目の通路でした!」
説明されなくても正解と言われた時点で僕にはわかりきっていたことだ。だが、そんなことよりも、今は僕の立たされている現状を知った上で、このとっておきの笑顔を見せてくれているこのマスコットキャラの顔が憎い。
「解説のためだけにその顔を見せるな!!」
思わずそう怒鳴ると、僕は現状の最強魔法を放つ。もちろんすり抜けるだけで効果はない。そのことが余計に僕のストレスを増やす。新しい情報もよこさないしな!
結局アース君は解説だけすると、煙のようにその姿を消してしまった。
「……次は、次こそは……」
物騒なことを呟きながら次へと向かう。
あのマスコットはプレイヤーの平常心を崩すための、1つの罠なのではないかと疑っている。
「製作会社はなんであれをマスコットとして認めたんだ……」
あんな精神衛生上よろしくない、生理的に不快なマスコットを採用したのか理解できない。
女性ユーザーがあれを見ただけでこのゲームを諦めるというのも、あながち都市伝説ではないのかもしれない。
それにしても……。
「次の場所に出ないな……」
アース君を撒くために全力で走ったりしたのだが、通路が終わる気配がない。
なんとなく、地面に目印としてアイテムを置いてみる。
一方通行なのでここに戻って来れるはずはないのだが……。
またしても訪れた嫌な予感が拭いきれず、足は自然と早くなっていく。
――――1分もかからなかっただろう。
進行方向には僕が先ほど置き去りにしたはずのアイテムがあった。
「無限ループか……」
2度、3度と試してみたが結果は変わらなかった。どうやらこの回廊が次の罠だったらしい。ちなみに、逆走しても同じ場所に戻されてしまった。
それだけ走り回った結果、今回はヒントとなるらしきものは見当たらなかった。
自力だけで突破しろということらしい。
仕方がないので見落としがないかもう1度回ることにした。
壁や床を念入りに調べていく。しかし、結果は変わらず元の場所に戻って来るだけだった。
「どうしろっていうんだ……?」
途方に暮れ、思わず立ち止まってしまう。ゲームなのだから何かあるのだろうが、皆目見当もつかない。
僕は溜息を吐くと、特に意識せずアイテムを取り出した。