一つ目の試練 (6)
広間にのような場所に出た。警戒しながら周囲に目を走らせる。
どうやらモンスターが出てくる気配はないようだ。
広間の中央に、岩に追われていた時と同じ石版が置かれているだけのようだ。
顔を上げて広間内を見渡す。どうやらここでまた問題が出されるようだ。
僕が入って来た道を含めると全部で12、ここは12個もの通路に枝分かれしているようだ。しかし、僕の背後、僕が通って来た道は数に含めなくていいだろう。
『まあそれでも11個の道が残ってるんだけど……』
そう考えながら行き先のヒントが書かれているだろう石版に目を通す。
『後戻りは出来ない 時は正常に回っている そしてこの先への道を知るのは12匹の動物だ』
それだけの文を読み終わると、轟音と共に背後の通路が閉ざされた。
「まさか、これだけ?」
僕は急いで石版を読み直す。しかし、表示されるのは同じものだけだ。
その時、頭上で何かが軋む音がした。そちらへ目を向ける。そこには亀裂が走っており、崩れ落ちて来そうになっている天井部があった。
「しかも時間制限付き!?」
思わず大声を出してしまった。
焦燥感に襲われながらも考えを巡らせる。
「石版を読む前には何も見当たらなかったんだから……」
石版を読んでから起きた変化、つまり背後で閉じた扉へと駆け寄る。
扉を調べる。扉の中央部には絵が描かれていた。
「蛇?」
爬虫類のあの蛇だった。
それと同時にまた頭上で音がした。どうやら亀裂が悪化したようだ。
「12匹の動物で、蛇が入ってくるなら……干支?」
また音が響いた。あまり時間は残っていないらしい。
「後ろが蛇だとしたら、対面が猪になるから、時計周りに1時のところが子、2時のところが丑とすると……」
自分の考えを声に出していく。そうしないと、考えをまとめられそうになかった。
「龍の対応する干支は寅と卯。つまり3時のところか4時のところになる」
徐々に頭上からの音の間隔が早まっている。
「どっちだ……」
二つの通路を見比べる。
残念ながら他にヒントとなりそうな物は見当たらない。
「落ち着け。考えろ……」
音は間隔が早まって行き、今ではずっと鳴り続けている。もういつ決壊してもおかしくない。
目を閉じると思考を巡らせる。
『龍……。干支……。蛇……』
今回出されたヒントを思い出していく。ふと、何かが引っかかった。
「……12?」
何か12という数字に、龍に対応するものがあったような気がする。
「12?時計か?」
しかし、喉元まで来ているのに出てこない。
崩壊の足音はもうすぐそこまで来ている。頭に小石が当たっているようだが、気にしてなどいられない。
「…………思い出した!」
声を張り上げたのが引き金となったかのように天井が崩れ始めた。
僕は慌てて、転がり込むように通路へと走り込む。
轟音と共に広間だけでなく、広間に近い通路までもが崩れて行く。
音が止むと同時に、通路は完全に塞がれてしまっていた。