一つ目の試練 (2)
「限りがないな」
僕は進路を阻んでいる宝箱の群れに魔法を放ちながら溜息を吐く。魔法の詠唱時間があるため少しづつしか先に進むことが出来ない。
「実はバグでしたなんて落ちはないよな……?」
際限なくミミックが湧き続けるため少しづつ不安になってきた。
本当に終わらないんじゃないかと考え始めた頃、宝箱の一団の姿が途切れた。
少し歩いたらまた続きが出るんじゃないかと、必要以上に警戒しながら前進する。
「……完全に途切れたか」
ある程度の距離を進んだところでそう判断した。
大して進んではいないのだろうが、精神的に疲れ果ててしまったので小休止を挟む。小休止の間にミミック討伐により手に入ったステータスの割り振りと、レベルが上がった分のスキルの割り振りをしておく。
「弱いくせに経験値だけは豊富だな。おかげでだいぶ上がったけど」
普通に進めていたら中盤程度のレベルだろうか。
経験値から逆算したら何匹倒したかわかるな~などと考えながら割り振りを終える。もちろん考えるだけで実際に逆算などしない。
「はあ。さて、こんなしんどいクエストはさっさと終わらせよう」
さほど休憩してないが、先延ばしにしたら心が折れそうなので一気に行ってしまうことにする。
松明を頼りに洞窟を進んでいく。
何があるかわからないので周囲への警戒を怠らない。
そうしていると、不意に視界が少しだけ揺れた。
嫌な、予感がした。
視線を下に向ける。
足を乗せる前までほんの少し飛び出していた石が、今は逆に地面に沈んでいる。
現状を確認すると同時に、後ろで何か重たい物が落ちるような音が響いた。それも結構な音量でだ。
僕は恐る恐る振り返る。
松明の照らしている範囲にこれといった異常は見えない。見えないのだが、異常は別のところから、はっきりと確認できた。
音がするのだ。
何か大きな物が転がってくるような音が。当たり前のようにこちらに近づいて来ている。
僕は迷わず走り出した。
この状況なら後ろから何が来ているか考えるまでもない。
「くそ!なんてベタな!」
そう言わずにはいられなかった。
そのベタな罠に引っ掛かったことに羞恥を覚えずにはいられない。やはり僕の操作するキャラが走るよりも速いようだ。
徐々にだが距離を詰められていることが聞こえてくる音から伝わる。
「……っ!」
そうして走って行くうちに、松明の照らす範囲にそれは出現した。
「……こんなっ!」
視界に入った物は、通路を埋め尽くすほどの巨大な岩だった。やはり思った通りだった。
「こんなベタな罠で死んでたまるかああああああ!!!」
僕は思わず叫んでしまった。
4日も放置してしまった・・・。