一つ目の試練
入口は狭いように感じたが、中はそれなりの空間があったので移動は楽だった。
足元には薄く水が流れている。洞窟内に水源でもあるのだろう。
僕は何が起きてもいいように周囲を警戒しながらゆっくりと進む。
松明の見える範囲にはこれといって何かがある訳ではなかったが、警戒するにこしたことはない。それに何か重要なアイテムが転がっているかもしれない。
そうしてしばらく進むと、進行方向に影が射した。
通路の真ん中に宝箱が転がっていた。
「…………」
松明の明かりが届く範囲で立ち止まると、無言で魔法を選択する。
魔法の詠唱があり、紙一重で視界に入っている宝箱に向かって、魔法をぶっぱなした。
経験値とステータスポイント取得のログが流れる。
「…………」
アースには宝箱という物は存在しない。
だというのに、なぜかダンジョン内に入ると、稀にミミックという宝箱に擬態するモンスターがいることがある。
「そのほうが面白くないですか?」
とは公式HPの談だ。
罠として機能しないミミックなど、ただの雑魚だと思うのだが……。「あんなのでそこそこの経験値が入るなら宝箱だろw」(wは笑いという意味)とどこかの掲示板で見た。納得した。
どうでもいいことを思い出しながら移動を再開する。
松明の明かりも僕に合わせて移動する。
「……冗談だろ?」
明かりで照らされた先には、道幅いっぱいにびっしりと敷き詰められたミミックの群れがあった。
「これを全部倒さないといけないのか……」
見える範囲だけで20に届きそうだ。
おそらく奥にはまだまだいるのだろう。
手強くはないが、ただめんどくさい。
僕は溜息を吐くと、威力の高い範囲魔法の詠唱を始めた。