クエスト名「EARTH」 4
「ここが富士の樹海か……」
僕の目の前には、鬱蒼と生い茂る草木が立ちはだかっていた。
コンパスに目を落とす。狂ったように回転しており、その役目を果たしていない。
ゲームとは言え出来れば足を踏み入れたくない空間だった。
「それにしても……。どう進んでいけばいいんだ?」
獣道すら見つかりそうにない。
アース君が案内してくれるという設定のはずだが……。
僕の近くに浮遊している、顔が気持ち悪い地球儀に目を向ける。最初にクエストについて説明をしてから動きがない。ここにくれば動くのかと思ったがその気配もない。
「どうしたもんかな~。……とりあえず入ってみようか」
突っ立っていても仕方がないという結論に至り、樹海に足を踏み入れる。
一歩樹海に踏み入ると、そこは外とは別の世界であった。
人の侵入を許さないかのように草木が進路を阻んでおり、100m先が見通せないほど薄暗い。バーチャル世界だというのに肌寒さを感じた。
ここだけ木々がやたらリアルに作られている気がする。
「凄い……」
僕は無言で立ち尽くしてしまった。しばらく棒立ちで見入っていると、突然に例の地球儀が反応を見せた。
「おはようございます。それでは案内人致します。しっかり付いてきてください。
迷子になった場合は二度とこの樹海から出られない恐れもありますので、ご注意ください」
気持ちの悪い笑顔でこちらを見つめたまま移動を開始した。
動きはそれほど速くないのだが、見通しがとても悪いので何度も見失いそうになる。
上下左右に行ったり来たりされ、方角が完全にわからなくなった頃、その場所に辿りついた。
「目的地に到着しました」
「洞窟?」
僕の前には一人通れるか通れないかといった具合の洞窟があった。
目の前を通ったとしても、言われなければ気がつかないだろう。
「それでは私はここで失礼致します」
そう言うとアース君は徐々に薄くなっていき、そのまま消えるようにいなくなった。
なんというか、いかにも何か出ますよという雰囲気の洞窟だった。
「出来れば入りたくないけど……」
ゆっくりと振りかえる。
道なき道を進むことになる樹海を抜けるよりは、確実な道がある分ましだろう。樹海に踏み込んだ時点で、僕には進むという選択肢以外は残されていなかった。
アイテムの松明を取り出す。
光源を確保すると、洞窟に足を踏み出した。