クエスト名「EARTH」 2
……。
『なんだこれは?』
空中に浮いている不思議な物体を凝視する。
見た目はゲームの制作会社が作ったマスコットキャラ・アース君に似ている。
アース君は地球に手と足と顔が付いているだけなのだが、微妙にリアルなせいで不気味過ぎるとある雑誌で取り上げられていた。しかし現在僕の眼前に浮いているこいつは違った。それは土星だった。
思わずインターネットで検索したので間違いないだろう。
「……なぜ、土星?」
返事など期待していないが突っ込まずにはいられなかった。
「見た目が土星なのは、このクエストを作成した者の暇つぶしです」
「ああ、そうなんだ……」
僕は虚脱感に苛まされた。
ずっとこのままなのかなと考えていたが、その心配は杞憂だったようですぐに不気味な顔が評判のアース君に戻った。
「悪ふざけはここら辺にしてクエストの説明をさせていただきます」
出来れば最初からふざけて欲しくなかったが、アースにはこの程度の悪ふざけはいくらでもあるので諦めることにする。
「クエスト:EARTHでは特定の場所に保存されている宝物を回収していただくことになります。
今回支給された装備はその宝物を守護するモンスターの討伐に欠かせないものです。
装備があったとしても討伐出来ない可能性があります。というよりは討伐出来ない可能性の方が高いです。しかもこのクエストは一回限りしか行うことが出来ませんのでご注意ください」
この装備で倒せないって、そのモンスターのパラメータおかしいだろ!
そんなことを考えながらアース君が吐き出し続ける文を読み飛ばしていく。
「クエストをクリア出来た場合は、装備品及び特殊なアイテムが手に入ります。それとクエストに失敗した場合は現在の装備等が白紙に戻されます」
「特殊なアイテムか・・・。どんなのだろう?」
「最後に、次の指定地には案内人である私がいないと侵入することが出来ないようになっております。なので次の指定地までになりますがどうぞよろしくお願いします」
「うげっ」
それは予想外だった。
思わずうめき声をあげてしまった。
「このセクハラジジイみたいな嫌な笑顔してるこいつを連れて歩かないといけないのか……」
非常に鬱だが、クエストを続けるには必要なので諦めるしかないのだろう。
「……前途多難だなあ」
しかし、愚痴を言っても始まらない。
どうなるかわからないが、とりあえず行動してみるのがいいだろう。
「次は富士の樹海か……」
案内人がいるということはコンパスの効かない場所なのだろう。
でなければ案内人など付ける必要がない。
「まずは港に出よう」
僕は行動を開始した。