〜異世界人と過ごす日常ファンタジー〜
序章 旅立ち
ふと、目が覚めた。
チュン。チュン。っと、雀の鳴き声が聞こえる。
いつもなら1時間は起きないのに今日という日に限って早く起きてしまった。
目覚まし時計の時刻を見る。
時刻は5時30分を迎えようとしていた。
部屋を見渡す。
部屋の隅っこには昨日のうちに荷造りしておいた荷物が綺麗になられべられている。
「はぁ。遂にこの日が来たのか」
今日は16歳の誕生日だ。
そして、冒険者になれる日。
見慣れた部屋ともこれで最後だ。
なんか感慨深いな。
16年間育ってきた部屋ともお別れするなんて少し悲しい。
出窓に飾ってあった剣に手を触れる。
10歳から素振りをしてきた剣だ。
鈍だが、今は一番手に馴染む。
「ふぅ。」
冒険者になる決意と別れを心の中で行った。
「よし!行くか!希望に満ち溢れたあの大地へ!」
部屋の中で一人で叫んだ。
と言っても、家族のいない自分には毎日が冒険のようなものだったけれど。
豪快なステップを踏んで階段を降りる。
「じゃあな!俺の家!冒険者として世界を制するまで、しばしの間お別れだ!」
家に鍵をかけ、隣人で親戚のカールおじさんに、鍵を手渡した。
別れ際におじさんが話しかけてきた。
「行くのか。」
「はい。」
短くその言葉だけを言うと、おじさんは目に涙を浮かべながら、ハグをしてきた。
「絶対に死ぬんじゃないぞ」
「当たり前ですよ!じゃあ、行ってきます!」
心配させないように笑顔で手を振った。
おじさんは涙を堪えた笑みで僕に手を振っていた。